サムライブルーの原材料BACK NUMBER
横浜F・マリノスの密着ドキュメント。
主将・喜田拓也「仲間の違う一面が」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKYODO
posted2020/04/01 11:40
昨季、15年ぶりのJ1優勝を果たした横浜F・マリノスのイレブン。キャプテンの1人、喜田(中央)はシャーレを掲げて喜んだ。
「いつも」をつくるのは、日々の積み重ね。
――8月24日の名古屋グランパス戦の前日。宿泊するホテルの夕食で喜田選手のバースデーケーキが運ばれて、みんなに何度も「おめでとう」といじられるシーンがありましたね。
「3連敗した後の試合前日がちょうど僕の誕生日で。みんなで記念写真を撮って、なんかいいきっかけになればいいなと思いました。
写真をあとで見ましたけど、みんなすごくいい表情だったんです。名古屋戦から1回も負けなかったので、あの日の夜のことは僕にとっても凄くいい思い出になっています」
――優勝に至るまでの過程においてあまり重圧みたいなものは映像を見ても感じませんでした。
「全部、落とせないというのは開幕からいつもそうでした。日々の練習から優勝するにはそれくらいじゃないとダメだって。つまりチームに、その姿勢が浸透していたから過度なプレッシャーを感じなかったと思うんです。
『いつも』をつくるのは、日々の積み重ね。これは慢心ということじゃなくて、その『いつも』が自信を持たせてくれた。だから優勝が懸かろうが関係ないと思うことができました」
優勝を記録した映像は立ち返る場所にもなる。
――今年も撮影のカメラが入っています。昨年とはまた違う「THE DAY」があるんでしょうね。
「去年は去年で素晴らしい仲間が集まってくれて、今年は新しい選手、スタッフも入ってきて多少入れ替わりましたけど、可能性を凄く感じています。
ただ、サッカーが1人でできないのと同じように、みんなあってのチーム。去年、積み重ねてきたものを今年はきちんと中身にしたいなって思うんです。横浜F・マリノスファミリーといったらこうだよっていうのを示していきたいですね」
チーム全員で取り組んできたことは嘘をつかない。
クラブ主導でドキュメンタリーを制作した意義は、対外的に発信する宣伝効果にとどまらない。チームの方向性、日々の取り組みを示すことによって、それが応援に「上乗せ」されてチームに戻ってくる。
常に見られているという意識、そして常に誰かが見てくれているという意識。いろんな目があることで、逆に客観的に自分を、チームを眺めることができる。「THE DAY」はチームの団結を促進する一助となったと感じる。
たかがドキュメンタリーと言うなかれ。
これからチームが苦境に立たされるとき、優勝を記録した昨年の映像は立ち返る場所にもなる。日々、チームを追いかけるカメラは、彼らを支える日常になっている。