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ドイツでの半年で変貌した川口太一。
同級生・石川祐希らに刺激も受けて。 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byYusuke Kurosawa

posted2020/03/26 19:00

ドイツでの半年で変貌した川口太一。同級生・石川祐希らに刺激も受けて。<Number Web> photograph by Yusuke Kurosawa

昨季のフィンランドに続き、今季も海外でプレーした川口。プレーヤーとしてだけでなく、1人の人間としての視野も広げた。

「お前は何考えてるんだ?」

 見方が変わっただけでなく、自身のチームへの働きかけ方も変わった。

「それぞれが違う意見を持っていて、みんながそれをしっかりと発言し合うというのは、これまではあまりなかった経験でした。日本人は自分の意見をあまり発しないというか、僕自身、自分の思っていることを自信を持って言えないほうでした。リアクションもオーバーにするほうじゃないですし。でも外国の人からすると、僕のリアクションの仕方や、自分の意見を主張しないということが不思議だったみたいで、『お前は何考えてるんだ?』とすごく言われました。

 日本だったら、言わなくても伝わったり、察してくれるだろうというのがあったんですけど、それはあくまでも日本の中でのこと。海外では、素直に自分の意見を言うことのほうが大切で、しかもそれを尊重してくれるんです。

 日本にいた時は、自分が言った意見が尊重されるのかな、という不安もありましたし、自分の発言に対して、人がどう受け取るか、どう思われるかというのをすごく気にしていました。でもロッテンブルクではそういう不安がなくなった。チームメイトのみんなにとっては、ありのままの意見を言うことが一番重要で、ありのままの自分でいていいんだ、自分を出してもいいんだ、というふうに変わっていきました」

トスを得意とするリベロ。

 川口は自分の意見を発するようになり、その成果は、試合の中にも見て取れた。

 今季のロッテンブルクは、川口の持ち味を存分に活かしたバレーを展開した。例えば、ラリー中にセッターが1本目を触ると、リベロの川口が素早くボールの下に入り、クイックやパイプ攻撃を積極的に使って相手ブロックを翻弄する。それはトスを得意とする川口が、自ら監督に売り込んで実現した。

「自分はこういう強みがある、というのを監督に話すと、監督もそうだなと納得してくれて、『こういうことをやってみよう』とみんなにシェアしてくれた。みんなは、そうやってリベロがトリッキーなトスを上げるというのを経験したことがなかったので、最初は対応できなかったんですけど、僕がやりたいことを理解してくれて、練習を重ねるごとにみんなも対応できるようになりました」

【次ページ】 ドイツで芽生えた「プロ」への意識。

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