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スポーツマンガはなぜリアル化した?
2010年代の潮流を探る3つの視点。 

text by

山内康裕(マンガナイト)

山内康裕(マンガナイト)Yasuhiro Yamauchi

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posted2020/03/06 11:00

スポーツマンガはなぜリアル化した?2010年代の潮流を探る3つの視点。<Number Web> photograph by AFLO

スポーツマンガの近年の大きな傾向として「リアル化」がある。もちろんそこには理由がある。

マイナースポーツマンガが増えた理由。

(3)マイナースポーツのリアルを描く

 2010年代後半になると、こうした「リアルなスポーツマンガの台頭」に牽引されてマイナースポーツをリアルに描くマンガというジャンルが大きく成長した。

「熱血」「必殺技」の時代には読者に馴染みのある競技であることが前提だったが、リアルな表現方法の台頭によって、競技の魅力や選手を取り巻く環境、真剣に打ち込む選手たちの人間模様がきちんと描かれていることの重要性がました。

 その競技を知らなくても違和感なく読める「リアルなマイナースポーツマンガ」は、その競技への入り口としても最適である。

 ここでは、2015年に始まった『灼熱カバディ』(武蔵野創)、2019年にweb連載が開始した『東京トイボクシーズ』(うめ(小沢高広/妹尾朝子))を取り上げたい。


『灼熱カバディ』は、その名の通りカバディを題材にしたマンガで、舞台は高校のカバディ部だ。主人公もカバディなんてスポーツは知らないところからスタートし、視線が読者に寄り添っていて、リアリティがある。

 マイナースポーツを始めるきっかけ、他競技からの転向、ルールを作中でひとつずつ知っていくという「マイナースポーツ」ならではの楽しさがある一方で、熱血部活マンガとしての王道的展開も押さえていて、万人が楽しめるマンガとしての魅力も十分に持っている。マンガ経由でその種目を真剣に始める人も多くいるだろう。

 そして、今最も新しいスポーツともいえるeスポーツを題材にした『東京トイボクシーズ』は、高校に新設されたeスポーツ科を舞台に展開される物語だ。

「ゲームはスポーツという言葉を纏うことで何を手に入れ何を失うだろう」という作中の問いかけからもわかるように、「これからスポーツになり得るもの」や、その競技者についていち早く共感をもって考えることができる。

「eスポーツ? ゲームはスポ―ツではなくて娯楽でしょ?」と思っている方こそ、本作を読むことで、「スポーツとは何か」という原初的な問いに触れることができるはずだ。

リアル化の理由と影響。

 2000年以降、「熱血」要素を残しながらもスポーツマンガのリアル化が進んできた背景には、「実写作品の原作としてのマンガ」という道が拓けたことがある。

 結果としてド派手な面白さだけでなく、「学べる」要素のあるマンガが多数登場し、そのスポーツのリアルを楽しみながら学べる入門書としても機能するような作品が、スポーツマンガ界の主軸になっている。

 自分の好きなものを増やしたり、または子供の進路を考えるときにも、現在の「リアルなスポーツマンガ」を楽しんでみてほしい。

構成協力=鈴木史恵(マンガナイト)

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