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空手・清水希容が2020初戦で敗北。
苦しむエースに、前エースの言葉。
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2020/02/01 19:00
採点競技では、ほかの選手よりも自分との戦いが結果に直結する。東京五輪までは、あと半年ある。
清水のライバルは38歳のサンチェス。
清水には強力なライバルがいる。スペインのサンドラ・サンチェス。芽が出なくても諦めず、30代に入ってからようやく世界トップの実力をつけた遅咲きの38歳だ。清水とは12歳差。
サンチェスの演武は力強いだけでなく、基本がしっかりしていると言われる。欧米選手はパワフルさやスピードには定評があったが、近年は技術も向上してきた。研究熱心な選手たちが毎年のように空手発祥の地とされる沖縄を訪れ、技を磨いているのも一因だろう。
空手は東京五輪で初めて五輪競技として行われる。WKFは国際オリンピック委員会(IOC)からの指摘を受け、形の判定をより観客に分かりやすくするため、旗判定から採点方式に変えた。
テクニカル・パフォーマンス(技術点)、アスレチック・パフォーマンス(競技点)と2種類の採点項目があり、30点満点である。
マドリードでの決勝は大差の敗北。
昨年11月に行われたプレミアリーグ最終戦マドリード大会の女子形は、下馬評通りに清水とサンチェスが決勝で顔を合わせた。
先に演武した清水は大きなミスなく、26.28点。後攻のサンチェスは27.00点をマークした。0.01点を争う競技としては大差といえる。昨年のプレミアリーグ6大会で3勝ずつを分け合い、最終戦は年間女王を決める舞台だった。
翌年に迫った五輪で金メダルを取るため、「打倒サンチェス」に並々ならぬ意欲で臨んでいただけに、清水は人目に付かない場所に来ると涙を抑えられなかった。自信があった技術点でも敗れたことが、ショックを膨らませた。
形は、過去の結果も審判の採点に影響を与えると言われる。2018年世界選手権で自身の3連覇を阻んだサンチェスを上回るには、相手より明らかに上の演武を見せることが必要だった。少なくとも、清水本人はそう感じていた。
「世界選手権のことがあったので、僅差ではサンドラに勝てないのはよく分かっていました。かなりの差をつけて勝ちにいこうと思って臨んだんですけど、いつも以上に離されてしまいました」