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空手・清水希容が2020初戦で敗北。
苦しむエースに、前エースの言葉。
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2020/02/01 19:00
採点競技では、ほかの選手よりも自分との戦いが結果に直結する。東京五輪までは、あと半年ある。
「呼吸音」と「力の加減」。
清水が課題にしているのが「呼吸音」と「力の加減」。技術点を評価する基準の1つに「適切な呼吸」があり、呼吸音が大きいと減点されてしまう。練習では音を抑えることができるが、本番で気持ちが高まると大きくなってしまうという。
余計に力が入ることで技のめりはりもなくなり、日本代表の古川哲也コーチは「少し力の強弱が一定になっていた部分はあった」と厳しい表情を見せた。
年が明け、東京五輪イヤーの初戦であるプレミアリーグ・パリ大会がやってきた。ここで何としても「サンチェス強し」のイメージを払拭しなければならない。
清水は1、2回戦を同組トップの得点で勝ち上がり、8人による準決勝に臨んだ。1番手で得意の形を披露し、26.22点。だが、7番目に演武したイタリアのビビアナ・ボッタロが26.26点を挙げ、清水はこの組2位でまさかの3位決定戦に回ることになった。
右膝に施された大きなテーピング。
プレミアリーグで決勝に進めないのは2018年2月のドバイ大会以来で、約2年ぶりの屈辱。失意の表情でチームメートらが集まる控室に戻ると、身支度を調える途中、右膝周辺に大きなテーピングを施しているのが私の目に入った。清水は荷物をまとめると、報道陣にほとんど対応することなく引き揚げた。
古川コーチが、その胸中を代弁した。「悔しいですね。ちょっと体が万全ではないところもあったので、いまひとつ体が動き切らない感じでした」
聞くと、1~2週間前の練習中に脚を痛めていたという。
「かなり(力を)コントロールして試合をやっていましたので、自分でもそこまで手応えはなかったはずです。ここで負けるのはかなり悔しいことですし、自分に対してふがいない思いもあるでしょう。しっかりと治れば問題ないと思いますけれど……」