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「アグエロォォ」、遂にアンリ超え。
通算180得点とペップを見返す適応。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/01/25 20:00

「アグエロォォ」、遂にアンリ超え。通算180得点とペップを見返す適応。<Number Web> photograph by Getty Images

アグエロという世界屈指の“計算できるストライカー”がいるからこそ、グアルディオラ監督の精緻なパスサッカーは成り立っている。

ハットトリック12回は歴代最多。

 巷でも、プレミア歴代ベストイレブンを選ぶとすれば、前線にアンリを入れる者が、アグエロの名を挙げる者よりも圧倒的に多いと思われる。

 とはいえ、ストライカーとしての決定力がアンリに勝るとも劣らぬレベルにあることは間違いない。アンリより3試合少ない通算255試合目のリーグ戦出場で、外国人選手としての最多得点記録を塗り替えた事実も証明している。

 筆者は昨年2月、エティハド・スタジアムでアグエロには珍しいミスを目撃している。キャリア最低とも言うべきシュート失敗だった。

 ゴールから2mと離れていない位置で足下に来たクロスに合わせたにもかかわらず、ボールは枠外に転がっていった。対戦相手のチェルシーファンとしては「超ラッキー」な心境。しかしこの試合、アグエロは最終的にハットトリックを決め、6得点大勝の立役者となった。

 プレミアでのハットトリック達成はアンリを抜いたアストンビラ戦が通算12回目。これはシアラー(11回)を抜いて歴代単独首位となる偉業である。

左足、頭でも決められるのに過小評価。

 アグエロはユニークな外国人得点王でもある。

 彼のように移籍早々から実力を発揮すれば、トップクラスのFWは引く手あまた。プレミアに長居しないケースが一般的だ。リーグ得点王の個人タイトルで箔がつけば、年俸額、優勝の可能性、監督との関係など、その対象が何であれ、より良い環境を求めがち。ルート・ファンニステルローイは在籍6年目を迎えず、アレックス・ファーガソン体制で黄金期にあったユナイテッドから出ていった。

 ルイス・スアレスは3年半でリバプールからバルセロナへ。ジミー・フロイド・ハッセルバインクは、たった2年しかリーズにいなかった。その点、シティでの9年目を迎えているのが、2015年プレミア得点王のアグエロだ。

 得点力のみならず希少価値も高いアグエロ。彼に対する過小評価は、やはりイメージの問題なのだろう。アンリは起用されたテレビCMのキャッチフレーズだった「バ・バ・ブーン」が自身の代名詞になったが、「魅力的」という意味の言葉はアグエロには似合わない。

 見た目からして、速くてしなやかなテクニシャン風の元アーセナルFWと違い、低重心で相手のボディチェックを撥ね返すシティの絶対エースは、ボックス内で泥臭く仕事をする点取り屋のイメージが強い。

 その一方で、ゴール前でクロスに利き足で合わせるだけのフィニッシャーではない。リーグ180得点の内訳は右足シュート127点、左足34点、ヘディング18点、手を除くその他の部位で1点。圧倒的に右足が多い点はアンリも同じで(136点)、左足と頭で決めた得点はアンリ(それぞれ31点と6点)よりも多い。

 アシスト数は、チャンスメイカー的な色合いも濃かったアンリ(74回)にリードされているが、今季24節終了時点で通算46回という数字は、ロビン・ファンペルシの53回と比べても遜色はない。

 アンリと同じく技巧派のイメージが強いファンペルシは、アーセナルとユナイテッド合わせて計280試合出場で樹立した数字。一方、アグエロはプレミアでの出場試合が「23」少ない時点でのものである。

【次ページ】 ワールドクラスで異色の適応力。

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