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トルシエがU-23日本代表に失望……。
「選手達の野心のなさには驚いた」
 

text by

田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byJFA/AFLO

posted2020/01/18 11:50

トルシエがU-23日本代表に失望……。「選手達の野心のなさには驚いた」<Number Web> photograph by JFA/AFLO

右から、森保一監督、横内昭展コーチ、栗原克志コーチ、下田崇GKコーチ、松本良一フィジカルコーチ……チーム編成の難しさをどう乗り切るか?

「本当であるならば、私にはすごく残念だ」

「君のいうことが本当であるならば、私にはすごく残念だ。このグループは本気で勝つ意志も、挑戦への気概も持っていなかったことになる。選手たちには五輪行きのチケットを奪い取ってやろうという気持ちもなかった。日本のこの世代の選手たちがそんな気持ちでいることに私はとても驚いた。

 私は日本サッカーをよく知っている。選手は才能に溢れている。それなのにこの大会の日本は本当に愚かだった」

――愚かというか……。

「森保にはまだまだやるべき多くの仕事が残されている。いずれにせよこのグループは……彼ら以外にも選手はいる。日本はこの大会で悪いイメージを残した。森保も少し不安定になっただろう」

――彼の立場がということですか?

「いや、批判に対してだ。森保はちょっと面目を失った。これまで彼が確立したイメージ、日本サッカーのイメージを損なった。結果に対しても、彼は責任を感じるだろう。それが彼のやる気を削ぎ、立場を弱くしないことを私は願っている」

「3試合をその同じやり方でプレーした」

――それでは森保監督は、五輪に向けてチームをどう修正していけばいいのでしょうか?

「新しい選手たちとやり直すことが第一だ。この3試合では戦術的なバラエティがほとんど見られなかった。森保のシェーマ(戦術的枠組み)は良く知られている。五輪代表では3-4-3のシステムでポゼッションのスタイルをとる。3試合をその同じやり方でプレーした。プロフォンダー(縦への速くて深い攻撃)も果敢なアタックもほとんど見られず、とりわけトランジションが不足していた。つまりボールを奪ってからのプレーが遅く、攻撃に移るまでに時間がかかった。

 チームの意志としてまずボールを保持する。そこから攻撃を開始する。しかし残念ながらそのシェーマは、積極性もタレントも欠いていた。ドリブルも個の決断もなかった。このシステムが機能するためには、個で相手ディフェンスを崩せることが前提だった。

 もしも彼がシステムを変えたいのであれば、まずはトランジションを迅速におこなうことだ。そのためには、まずはボールを奪う必要がある。しかし日本のボール奪取はさほどアグレッシブではなく、しかも奪う位置が低すぎる。高い位置でボールを奪えないから迅速なトランジションができない。だから、攻撃のテンポもいつも同じになってしまうわけだ。

 また、ボールを一旦失うとポジションに戻り相手の攻撃を待つ……というスタイルだ。そこで再びボールを奪っても後方から攻撃を開始するから、左右に展開しても相手は十分に対処できる時間があることになってしまう。もう日本の前には強固な守備の壁が出来あがっている。そして、その壁を突き崩せるだけの個の力を持った選手はいなかった」

【次ページ】 選手招集に不安が残ることが心配だが……。

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