“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
青森山田・藤原優大は泣かなかった。
「もちろんこの場所に帰ってきます」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/01/20 11:40
静岡学園FW加納に同点弾を許したシーン。青森山田DF藤原はその瞬間を振り返り、唇を噛み締めた。
「まだまだこんなもんじゃない」
そして迎えた今大会。何度も献身的なカバーリングがチームの危機を救ってきた。裏を狙われても、スプリントとスムーズな足出しでボールをセーフティーゾーンに弾き、1対1と空中戦では無類の強さを発揮した。終始、味方に大きな声を出して鼓舞をする姿は、まさにDFリーダーだった。それでも決勝では3失点を喫した。
「3年生と最後まで試合ができたことは準優勝という結果以上に価値があるし、単純に楽しかったです。でも、今回の失点で自分がどう守らないといけないかをもう一度考え直さないといけないと思っています。
2点目はその前のプレーで距離を寄せたり、自分のコーチングで周りを動かすこともできた。試合を見る目や声の質だったり、そういう細部にまでこだわらないといけないなと凄く思った。この3失点という事実を糧にもっと成長しないといけないと思う。この悔しさを結果に繋げるには口だけじゃなくて、ひとつずつコツコツ結果を出していきたい。こんなんじゃダメだし、自分はまだまだこんなもんじゃないと思っています」
最後まで涙は見せなかった意味。
新チームでは彼がキャプテンとなるだろう。プロのスカウトもより具体的な動きを見せてくるだろう。2020年は彼にとってさらに責任と覚悟が必要な1年となる。
「高校卒業してすぐにプロになることを考えています。青森山田中に入る時も、弘前市出身のJリーガーは誰もいなくて、『自分が最初になる』と思っていたんです。でも昨年、ヴァンラーレ八戸がJ3に上がったことで、初の弘前出身の選手(成田諒介/現ブランデュー弘前FC)が誕生したので、僕は初の高卒即Jリーガーになりたいと思っています。
柴崎選手のように県民に応援される存在になりたいですし、そのためには来年の1年間は多くのものを背負いながら、自分らしく戦っていきたい。もちろんまたこの場所に帰ってきます」
失点を糧に。そして青森出身というプライドを糧に。
決勝戦後、彼は1度も涙を見せなかった。泣きじゃくる3年生の背中を叩きながら、静岡学園の表彰台での姿を、表彰式後のスタンド前でのセレブレーションを目に焼き付けるようにじっと見つめていた。その眼光は未来の自分に放たれていた。「次こそは」と。