“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
青森山田・藤原優大は泣かなかった。
「もちろんこの場所に帰ってきます」
posted2020/01/20 11:40
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
鬼気迫る表情で最終ラインに君臨し続けた。
青森山田の2年生・CB藤原優大は高校サッカー選手権の舞台で、182cmの高さと屈強なフィジカルを活かし、攻守において制空権を握っていた。1対1の強さ、スピードを生かしたカバーリング、味方を鼓舞する大きな声。2年生とは思えぬプレーで、チームの守備の柱となった。
だが、2連覇を懸けた静岡学園とのファイナルで非情な現実を突きつけられた――。
11分に古宿理久の左FKに反応し、ニアサイドで打点の高いヘッドを叩き込み、今大会初ゴール。チームに先制点をもたらした。しかし、2-1の1点リードで迎えた61分。藤原は一瞬の隙を静岡学園に突かれてしまう。
藤原が許した「一瞬の隙」。
自身から見て右方面から静岡学園MF草柳祐介が中央に向かってドリブルを仕掛けてきた。その時、藤原は左にいたFW加納大を何度も確認した。草柳が加納に当ててくるのは分かっていたからだ。
だが、ともに最終ラインを担った右サイドバックの内田陽介と右CBの箱崎拓が草柳に食いついたことで、藤原は咄嗟にカバーのポジションを取った。その瞬間、草柳は加納にパス。藤原は警戒していた加納に隙を与えてしまった。すぐさまブロックにいこうとするも、加納の鮮やかなターンにかわされ、同点弾を許してしまう。
さらに85分には、ファーサイドに飛んだ左FKに対し、そのエリアをケアしていた藤原とMF松木玖生が反応できず、静岡学園CB中谷颯辰に決勝ヘッドを沈められてしまった。
「2失点とも自分のせい。心の底から悔しかったし、申し訳ない気持ちでいっぱいです。特に2失点目はずっと準備をしていて、(加納に対して)正面に立とうと思っていたのですが、一瞬でターンをされて……。あそこをついていけないのは自分の実力の問題。3失点目もそう。本当に今までお世話になった3年生に申し訳ないです」
試合後のミックスゾーンで、彼は目を若干赤らめながらも毅然とした態度でハキハキと反省を口にした。
DFとして悔しい結果に終わってしまったが、藤原がいたからこそ、青森山田はここまで結果を出すことができたと言っても過言ではない。間違いなく、彼はこの1年間で物凄く成長した。ピッチ上での佇まい、影響力は間違いなく、春先とは違ったものであった。