欧州サッカーPRESSBACK NUMBER

レアルとバルサのバルベルデに見る、
未来を切り開く「勇気ある決断」。 

text by

吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2020/01/16 11:50

レアルとバルサのバルベルデに見る、未来を切り開く「勇気ある決断」。<Number Web> photograph by Getty Images

中盤インサイドハーフとして、マドリーの定位置を奪いつつあるバルベルデ。競い合う相手がモドリッチというのも豪華な話だ。

バルベルデ監督解任という決断。

「勝利のための決断」と言えば、バルサの監督人事もそうだろう。

 マドリーがスーペルコパを制した翌日の現地時間1月13日、バルサのエルネスト・バルベルデ監督が解任された。

 就任初年度の2017-18シーズンにリーガとコパ・デル・レイの2冠を達成。昨シーズンはリーガ連覇に導き、さらに3年目の今シーズンも19節を終えてマドリーと同勝点ながら首位と、この成績だけを見れば、解任される理由はない。

 しかし、今シーズンのパフォーマンスは安定せず、ここまですでに3敗(マドリーは1敗、3位のアトレティコは2敗)を喫している。また総得点49はリーグトップながら、総失点23は6位タイ。リオネル・メッシやルイス・スアレスの個の力に依存し、なによりもボールプレーを大切にするバルサらしさが年々希薄になりつつあるチームに、フロントやサポーターは危機感を抱いていた。

 直接的な引き金は、アトレティコに2-1から脆くも逆転負けを喫したスーペルコパ準決勝だが、最下位エスパニョールとの年明け初戦(19節)の采配も疑問視されていた。

 2-1とリードして迎えた75分にフレンキー・デヨングが退場処分となると、指揮官はアントワン・グリーズマンを下げて、DFのネウソン・セメドを投入。体力的にきつそうに映ったスアレスではなく、なぜ守備での貢献が期待できるグリーズマンを引っ込めたのか。勝利よりも功労者への配慮を優先した采配は、結果的に終了間際の失点を招き、バルサは貴重な勝点2をみすみす失っている。

勝負師ジダンと比べると勝負弱い。

 いや、それ以前からバルベルデへの不信感は燻り続けていただろう。なにしろ、就任から2シーズン連続で、チャンピオンズリーグ(CL)の舞台で醜態をさらしていたのだから。2017-18シーズンは準々決勝でローマに、昨シーズンは準決勝でリバプールに、バルベルデのバルサはいずれも歴史的な逆転負けを喫している。

 バルベルデでは、ヨーロッパの頂点に立てない──。

 そんな想いは、宿敵マドリーを率いるジダンの成功をなぞれば、なおさら増幅していったに違いない。

 CL3連覇の大偉業に、クラブワールドカップ、UEFAスーパーカップ、そしてスーペルコパを2度ずつ。マドリーの監督として戦った9度のファイナルにすべて勝利してきた勝負師ジダンと比較して、自軍の将のここ一番での勝負弱さを嘆きたくもなっただろう。

【次ページ】 セティエンはイズムを取り戻せるか。

BACK 1 2 3 4 NEXT
#レアル・マドリー
#バルセロナ
#フェデリコ・バルベルデ
#エルネスト・バルベルデ

海外サッカーの前後の記事

ページトップ