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遠藤航の“待つことができる”才能。
ブンデス昇格へ、試運転は済んだ。
posted2020/01/16 08:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
試合に出られない葛藤や憤りを表に出さず、日々できることに取り組み、来るべきチャンスに備えて、準備をしていく。
出場機会が少ない、あるいは、ほとんどない選手はそう言葉にする。そうとしか言いようがない。愚痴ったところで何かが変わるわけではないし、文句を言っても仕方がない。監督に直談判し、自分に課されている課題や役割をはっきりと理解して取り組むことはできる。ただよほどのことがない限り、監督がその言葉を聞き入れて、状況がいきなり好転することなどない。
他にも選手はいるし、チーム状況、これまでの実績がある。だから多くの監督は「我慢強く頑張ってくれ」という言葉を選手に送る。
わかっている。だからみんな、ひたむきに自分をアピールし続けることと向き合う。
とはいえ、努力しても努力しても出場チャンスがないまま日々が過ぎていくなかで、モチベーションを落とすことなく、気持ちを切らすことなく、目的意識を高く持ちながら、練習で全力を出していく――というのは、言葉にする以上に大変なことだ。
どこかで焦りが、不安が、いら立ちが出てきてしまいがちだ。そうした選手はたくさんいるし、おそらくそれが普通の反応なのだ。
移籍後2カ月半、焦りはなかった。
シント・トロイデンからシュツットガルトへとレンタル移籍してきた遠藤航。初出場は、2019年11月下旬のカールスルーエ戦だった。移籍から2カ月半、このときを待ち続け、このときのために準備し続けてきた。待てども待てども出場機会は訪れない。そんな時間を、遠藤はどのように過ごしていたのだろうか。
「そんなに焦りはなかったというか。ベンチに入って試合を見たりするなかで、チャンスが来ればやれる自信はありました。大事なのはチャンスが来たときに結果を残すこと。そのために、練習からしっかり100%で、常にいい準備をしておくというところだと思うんで。その普段の準備という意味で、監督もそれを見てくれたと思うし。
(監督も)最初は自分のプレーというのをよくわかってなかったし。実際に僕に対しても言ってきた。ただ単に時間が必要だったというか、自分もそう思っていたし、“レンタルで来た選手はなかなか使いにくいだろうな”と思いながら、100%やっていただけ。ただ、いい時間にはなったと思います」