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優勝を確信したのは残り0.8秒──。
天皇杯、SR渋谷の壮絶な全員バスケ。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byYukihito Taguchi

posted2020/01/14 20:00

優勝を確信したのは残り0.8秒──。天皇杯、SR渋谷の壮絶な全員バスケ。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

チャールズ・ジャクソンとどちらを起用するか伊佐HCも迷ったそうだが、期待に応えて活躍したセバスチャン・サイズ(2番)。

リーグ最多のオフェンスリバウンド。

 このシュートはリングにはじかれたが、渋谷の3選手がオフェンスリバウンドを取りに行き、ポイントガード(PG)の渡辺竜之佑がこれをつかみ、そのまま右アウトサイドにいた石井へパスを送った。

 ここに1つ目のポイントがある。

 今季のBリーグで、渋谷は1試合平均14.7本のオフェンスリバウンドを取っている。これはもちろんリーグ最多だ。

 近年のNBAでは、オフェンスリバウンドを狙いにいかないチームが増えている。オフェンスリバウンドに人数をかけて相手にリバウンドを取られると、速攻からイージーバスケットと呼ばれる簡単に得点を入れられる状況になるリスクが高いという統計があるからだ。

 伊佐もそのトレンドはわかっているが、10月27日にリーグ戦で川崎を下したあとに、オフェンスリバウンドをあえて取りに行かせた理由について、こう語っている。

「狙いにいくぶん、相手に走られます (笑) 。でも、うちにいるのはアクティブに動ける選手たち。オフェンスリバウンドを取れそうなメンバーだし、『取れなかったら、頑張って戻れ』と言えば、それを実行できるメンバーです」

3P王・石井はあえてシュートを打たず……。

 再び試合のシーンに戻ろう。

 オフェンスリバウンドをつかんだ渡辺からのパスを、石井が受けた時点で残り12.3秒。盛實のシュートが一度リングにあたっているから24秒のシュートクロックはリセットされている(このときは残り14秒を切ったので表示されていない)。

 石井が振り返る。

「あの時間帯は外からのシュートが続いていたのに、なかなか入っていなかったので、1本中に入れたいなと思っていて。で、パスを入れるなら(ニック・)ファジーカス選手のところをつこうと」

 この日、チームには攻撃の際、「ファジーカスを引き出せ」という指示が出ていた。

 昨シーズンにBリーグ史上最高確率での3P王に輝いた石井だが、この場面ではあえてシュートを打たず、サイズに手招きした。サイズが、石井の近くにいた川崎の辻直人にスクリーンをかける。

 右サイドにいた石井は反時計回りに回転するような動きで、ゴール下に向かうふりをし、同時にサイズがリングに向かって走る。リングの正面にたっていた川崎のファジーカスは、石井の方に寄ってくる。これでギャップが生まれた。

 石井からのバウンドしたパスを受けたサイズが豪快にダンクをたたき込んで、同点に追いついた。

【次ページ】 全員が同じ共通理解をもてるように。

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