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優勝を確信したのは残り0.8秒──。
天皇杯、SR渋谷の壮絶な全員バスケ。
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![ミムラユウスケ](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/8/90/img_6893d8ae37a7803861c2f66790f5844b6144.jpg)
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byYukihito Taguchi
posted2020/01/14 20:00
![優勝を確信したのは残り0.8秒──。天皇杯、SR渋谷の壮絶な全員バスケ。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/2/c/700/img_2c06b215dd9e7b0d2c41dc8f8c1d9b88152432.jpg)
チャールズ・ジャクソンとどちらを起用するか伊佐HCも迷ったそうだが、期待に応えて活躍したセバスチャン・サイズ(2番)。
川崎の3Pシュート成功率が低かった訳。
とはいえ、ボールをキレイに奪って一気にゴールを決めた場面が、決勝戦でそれほど多くあったわけではない。川崎もまた、タレントと組織力を誇るチームだからだ。
ただ終わってみれば、ボールプレッシャーの成果を示すこんなデータが残った。
決勝戦での川崎の3Pシュート成功率、22.9%。
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Bリーグの1試合平均の成功率が最も低いチームでも30%、川崎はリーグ1位の38.1%を記録しているチームである。
決勝戦でのこの成功率の低さは、渋谷の激しいボールプレッシャーが川崎の選手たちの体力を削り取っていったことと無関係ではない。
残り0.8秒で勝利を確信。
決勝戦に出場したのは、川崎ではプレー可能だった10人のうち8人。一方の渋谷は、プレー可能な12人全員がコートに立った。ほとんど差が見当たらなかった両チームの差は、そこに見て取れる。
渋谷は「全員バスケ」で「ボールプレッシャー」を40分間続けることができた。それを可能にしたのは、全員が出場することで、コートに立っている間は激しくプレッシャーをかけ、こまめにベンチで休む時間を取ることができたからだ。
決勝戦の残り0.8秒のこと。前身の日立サンロッカーズ東京が2015年に天皇杯を制したときから今もチームに残る唯一の選手である広瀬健太が1本目のフリースローを決めた。
4点差のリードとなり、優勝を確信した伊佐はベンチの先にあるエリアに座っていたジャクソンのもとへ歩みを進めた。
ジャクソンが「コーチ、まだ試合は終わっていないよ」と言うのを聞く前に、伊佐は自分の目からあふれ出すものがあることを感じていた。
「試合前のチーム全体でのミーティングで『今日はライアンとセバスチャンで行く』といったときに、CJ(ジャクソンのニックネーム)は浮かない顔を少しだけ見せながら、しっかりとうなずいてくれたんですよ。
どんな選手でも、ファイナルには出たいもの。申し訳ない気持ちはもちろんあって、優勝した際には彼と一番最初にハグをしたいと考えていました。でも、あのとき彼の顔を見た瞬間に、もう……」