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羽生結弦と同郷で同い年、鈴木潤。
ソニーのエンジニアに華麗なる転身。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph bySho Tamura/AFLO SPORT
posted2020/01/12 20:00
7度目の出場となった今回の全日本選手権。同郷で同い年の羽生とは、同じリンクで練習していた時期もあった。
スケートと勉強の共通点とは?
鈴木は「スケートに対する考え方は、勉強の方にも応用できる」とも言う。
「実験でも技術は必要。最初はうまくいかなくても、頭を使いながら効率よく技術を習得していくプロセスはスケートと共通しています」と相乗効果を指摘した。
12月22日の全日本選手権フリースケーティングでは、4分間の『ビートルズメドレー』にスケート人生のすべての思いを乗せて滑った。演技の終盤には「僕の代名詞」(鈴木)というイーグルで、いつもの倍近い距離を滑り、万感の思いを表現した。
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「最後のスピンの時間が足りなくなっても構わないと思って、イーグルを長めにやりました。だから最後のスピンは全然回らなかったんですけど」
最終成績は17位。額に汗をにじませたまま、すがすがしく言った。
ソニーに就職し、エンジニアに。
大学院を修了する今春、ソニーに就職し、プログラミングのエンジニアになる。
北大工学部時代は応用マテリアル工学コースで金属の物性や合成法の研究をした。
大学院では学部時代とは一転して、有機合成を研究。ソニーの入社に当たっては、それらともまた違うプログラミングを志望した。変化の激しい世の中で、新しいテクノロジーの分野に携わりたいとの思いがあるからだ。
化学実験に明け暮れた学生生活から、これからはパソコンを駆使し、AIなどで未来を切り開いていく仕事が生業となる。
鈴木の根底にある、時代の流れに沿って臨機応変に物事に取り組もうという姿勢は、スケートから学んだことでもある。鈴木はこのように言う。
「スケートは一見変わらないように見えますが、時代ごとに常に変化しているので新しい発見があります。技術も、スケーティングも、基本は同じだけど時代によってルールが変わり、それを突き詰めるから、また新たな難しいルールができる。終わりがない。常に進化し続けているスポーツだと思います」