セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
実録・無法ウルトラスに潜入(5)
“反社”の奥底にある文化と純粋さ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byTakashi Yuge
posted2020/01/09 11:00
レッジーナの伝説のリーダー、カルミネ。彼のような男でなければ、ウルトラスは機能しなかったのだろう。
当時の監督も「独特だ」と表現。
海峡ダービーに連敗した監督マッツァーリ(現トリノ)の試合後の会見をよく覚えている。
「言葉にするのは難しいんだが、レッジョのクルバ・スッド(南側ゴール裏)にいるファンというのは何か独特だ。イタリア中を見渡してみても特別な部類に入ると思う。彼らは自分たちの下に選手が集ってくれること、一体となることを強く求めてくる。私はそんなレッジョの空気が好きだがね」
現役時代や指導者のキャリアを通じて国中のクルバを見てきた指揮官は、レッジョのファンに「勝てなかったことを詫びたい」と心から述べた。
そして、翌シーズン以降4度戦った海峡ダービーを2勝1分1敗と勝ち越すことで、町とクルバに報いてみせたのだ。
ウルトラスの語源は19世紀らしい。
「ウルトラス」の語源は、19世紀のフランスにあるらしい。
第2次復古王政期(1815-30)に反動政治を進めた過激な保守派グループ「超王党派(Ultra-royaliste)」を語源とする一説が有力とされている。もともと極右活動家の集まりだったという話だ。
第2次大戦後の復興期を経たイタリア・サッカー界が、黄金時代へ向けて突き進み始めた'60年代、各クラブの応援風景も発展の一途をたどった。応援活動は組織化され、過激化した。
数の力が、票田として政治活動にも影響をもたらすほど肥大化し始めたことに気づいたイタリアの新聞やTVが、フランスの故事にならい「ウルトラス」という表現を使い始めたとされている。
もちろん、「ボーイズ」の連中との会話で「フランス王政」なんて単語が出てきたためしは一度もないが、ときどき難解な横断幕に出くわすことがある。
「URBS FOEDERARATA 264 a.c.」
メッシーナのウルトラスが、ダービーのときに即興の横断幕で掲げた文言だ。紀元前264年というのはわかったが、スタジアムでラテン語を見てもお手上げだった。