松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
パラテコンドー日本代表、伊藤力。
松岡修造にパラ五輪を目指すまでを語る。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byNanae Suzuki
posted2020/01/09 18:00
「松岡さんは大きいし脚も長いからすごくテコンドーに向いていると思います! 」とは日本代表選手の伊藤力。
「もともとはサッカーをやっていたんですよ」
伊藤「やっぱりマイナーなスポーツだからだと思います。国内で言うと、テコンドーよりも空手を選ぶ。今でこそ少し競技人口が増えてますけど、空手に比べるとまだまだ少ないです。でも、海外ではわりと人気があって、僕みたいに手が動かない人が選択しやすいスポーツでもあるんですね。それで2005年頃に初めて国際的な委員会ができて、2009年には初の世界選手権が開かれた。海外だと小さい子どものうちから始めているという選手もけっこういます」
松岡「なるほど、手に障がいを持った方が格闘系の種目をやろうと思ったら、テコンドーがまず選択肢に入るわけですね」
伊藤「あとは柔術。格闘系だとそれくらいですかね」
松岡「力さんも、腕を失ってからすぐにテコンドーを始めたんですか」
伊藤「失ってから1年後くらいです。もともとはサッカーをやっていたんですよ。アンプティサッカーという松葉杖をついてやるサッカーがあるんですけど、そこでキーパーをやっていて、その時『パラテコンドーをやってみない?』と声をかけられなかったら、今でもサッカーの方をやっていたかもしれません」
松岡「サッカーからテコンドー。すごい転身ですね」
「死ぬことはないだろうと」
伊藤「そのアンプティサッカーもテコンドーも、どちらかがパラリンピックの新しい競技に採用されるだろうということで注目を集めていたんです。僕としてはパラに決まる方で頑張ってみたいと。本音を言うとサッカーの方で目指そうと考えてました」
松岡「じゃあ、テコンドーが新種目として採用されたからこの道に入ったということですか。もともと格闘系のスポーツをやっていたならあれですけど、いきなりテコンドーって怖くなかったですか? 僕は痛いのがダメだから、絶対に無理です」
伊藤「松岡さんは大きいし、脚も長いからすごくテコンドーに向いていると思います。今からでもやれば(笑)」
松岡「たとえ向いていても、気持ちが弱いから無理ですよ。一撃もらって『痛い』。それで終わり。その前向きなやる気は何なんだろう。何マインドですか?」
伊藤「元々こういう性格なんですよ。サッカーだってフィジカルコンタクトはあるし、しかも無差別じゃないですか。僕は身長が172cmなんですけど、180を超える選手とぶつかることもある。それと比べたらテコンドーには階級があるし、頭を蹴ることも禁止されているから死ぬことはないだろうと」
松岡「いきなり死ぬという発想にまで飛んじゃいましたね」
伊藤「さすがに1度腕を落としてますからね。そこは考えました。キックが胸に入って、その衝撃で心臓が止まったらどうしようとか。幸い頭への蹴りは禁止なので、そこまでのリスクはないと判断したんです」