松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
パラテコンドー日本代表、伊藤力。
松岡修造にパラ五輪を目指すまでを語る。
posted2020/01/09 18:00
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph by
Nanae Suzuki
2020年の東京パラリンピックで初採用となる競技がある。
そのひとつがパラテコンドーで、伊藤力さんは日本のパイオニアだ。
パラテコンドーにはキョルギ(組手)とプムセ(型)の2種目があり、東京で実施されるのはキョルギのみ。上肢に切断や機能障害のある選手が対象である。伊藤さんは事故で利き手の右腕を失った。2015年の春と言うから、そう昔の話ではない。そこからどう立ち上がり、テコン道(ドー)を極めてきたのか。
松岡さんが興味津々の様子で伊藤さんに話しかける。
松岡「パラテコンドーは新しい競技だから、僕もよく分かっていないんです。失礼を承知でストレートに聞いて良いですか? パッと見、力さんは障がいを持っている方に見えないんですけど」
伊藤「そうですか。嬉しいです(笑)」
松岡「車いすにも乗っていないですし、普通に話せる。健常者の大会に出ていても違和感がない感じがするんですね」
伊藤「自分も障がい者だとは思っていなくて。障がいはむしろ、競技に出るための資格だと思ってます。実際にフツーのテコンドーの試合にも出ていて、去年も健常者の大会に出ました」
わずか3年強で日本代表に!
松岡「でも力さんは確か、左腕しか使えない。それはハンデということですか」
伊藤「はい、ただ自分が不利なだけ。だから蹴りを多くしたり、あまりやっちゃいけないことですけど、足でこうガードしたり。ちゃんとした手順を踏んでいけば、オリンピックの選考会にも出られるはずです」
松岡「ほんと失礼なことばかり聞きますけど、テコンドーを始めてまだ日が浅いんですよね。始めて何年ですか」
伊藤「いま、3年ちょっとぐらいです」
松岡「それで今は日本代表に……。テコンドーには昔から興味があった?」
伊藤「昔、漫画『キックスメガミックス』で読んだり、スーパーファミコンの格(闘)ゲー『餓狼伝説』でテコンドー使いのキャラがいて、主に蹴りを使う格闘技ということは知ってました」
松岡「僕は岡本(依子)さんですね。2000年のシドニー五輪で銅メダルを獲って、嬉し涙をこぼした。あのシーンは強烈でした。テコンドーはわりと早くからオリンピックの種目になっているのに、なぜパラリンピックにはなかったんでしょう?」