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神戸優勝の要因はむしろ日本人選手?
飯倉、那須が語る緩さからの脱却。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byJFA/AFLO
posted2020/01/06 20:00
神戸の大補強戦略の中でも重要な役割を果たしたGK飯倉大樹。守備の要であると同時に、ビルドアップのスターターでもある。
鹿島相手でも、不安はなかった。
2019年シーズン限りで、現役引退した那須大亮も語る。
「相手をリスペクトしながら、言うべきことは言う空気ができて、頼もしい集団になっていった。だから、決勝で鹿島が相手だとしても心配することはなかった」
前半18分、相手オウンゴールでの先制点、そして38分の藤本憲明の2点目も、相手のミスを見逃さない厳しさが神戸にあった。
後半から3バックにシステムを変更した鹿島の猛攻にあうものの、ゴールを守る神戸には相手にボールを持たせているような余裕が感じられる。
「後半は鹿島の得意なデュエルに持っていかれて、セカンドボールのところで劣勢になって押し込まれる展開だったから、ハードすぎて優勝を考える余裕もなかった。鹿島は本当に強かった。1点獲られたら(優勝を)持っていかれるということしか考えられなかった」
飯倉はそう話したが、その表情にも充実感が漲っていた。
「勝って、強くなるんだよね」
「強くなって勝つんじゃなくて、勝って、強くなるんだよね。結果が先なんです。勝たないと強くはなれない」
鹿島の内田篤人は、一時はリーグ戦首位に立ちながらも優勝できなかったことを始め、タイトルを手にできない現状を問われて、そう答えている。
神戸に置き換えると、その真意はわかりやすい。
スペインの至宝と呼ばれる名選手を獲得しても、欧州で鳴らした選手が加入しても、結果がついてこなければ、チーム力は上がらなかった。酒井の加入によってもたらされたファーストディフェンスの厳しさも、それが勝利に繋がらなければ定着しなかったかもしれない。
言葉でその重要性を説いても、結果が出なければ納得感は薄い。けれど神戸の選手たちは酒井の加入を契機に、それぞれが感じていた「物足りなさ」を勝利という手ごたえで埋めたに違いない。
「マリノスでの終盤は、自分の本当のスタイルを見失っているところがあった。それが神戸に来て、ストロングポイントであるビルドアップ、自分の形を取り戻せた。そこで結果がついてきて、俺から始まる攻撃も前線から始まる守備も、ここ数カ月はいい方向へ進んだと思う。いろんな選手がいるけれど、みんなの意識が同じベクトルへ向かって一体感が持てたし、頑張って守備をするところができた」
守備の立て直しが課題だったチームへ加入したゴールキーパー飯倉は、タイトル獲得というひとつの責任を果たし、安堵感を浮かべていた。
スター選手の存在はチームへの刺激にはなるが、それだけではチームの強化は完成しない。日本人選手の意識が変わり、行動が変わり、プレーが変わってこその天皇杯優勝だった。