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神戸の天皇杯優勝は巨大エポックだ。
遂に見つけた理想と現実の合流地点。
posted2020/01/06 11:45
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
JFA/AFLO
現実なき理想主義との決別を、ヴィッセル神戸が高らかに宣言した。2019年シーズンの締めくくりであり、新たな1年の幕開けでもある天皇杯決勝で、ヴィッセルはクラブ創立25年にして初の国内メジャータイトルを獲得したのである。
新装なった国立競技場に歓喜の雄叫びが轟いた2020年元日から、時計の針を'19年2月22日へ戻す。ヴィッセルはセレッソ大阪のホームへ乗り込み、'19年シーズンの開幕戦に挑んでいた。
リーグ全体の幕開けよりひと足先に設定された金曜日のナイトゲームは、ヴィッセルのために用意されたと言っていいものだった。ルーカス・ポドルスキとアンドレス・イニエスタに加えてダビド・ビジャがチームの一員となり、メディアが“VIPトリオ”と名づけたトライアングルが前線に並ぶ。
中盤にはW杯プレーヤーの山口蛍を迎え、4バックの右サイドには日本代表経験を持つ西大伍が入る。三木谷浩史オーナーのもとで恒例となっている大型補強を経て、'19年シーズンこそはリーグの主役へ躍り出ることを使命とした。
カップ戦も含め、まさかの9連敗。
ところが、セレッソ戦は0-1の敗退に終わってしまうのである。
左にビジャ、右にポドルスキがワイドに張り出し、イニエスタが最前線中央でファジーなポジションを取る立ち位置からスタートするが、3人の距離感が遠すぎて連動性を生み出せなかった。後半は3人の立ち位置を変え、ポゼッション時は3バックにもしたが、ひとりひとりの個性が相手への脅威となっていかないのである。
チームはすぐに新たな戦力を加えていく。ブラジル人DFダンクレーが2節から、スペイン人MFセルジ・サンペールが4節からピッチに立つが、その代償として韓国人守護神キム・スンギュが外国人枠からこぼれ落ちてしまう。
6節の松本山雅FC戦でシーズン2敗目を喫し、7節のサンフレッチェ広島戦で連敗を喫すると、スペイン人指揮官フアン・マヌエル・リージョがクラブとの契約を解除する。前年9月に監督から退いた吉田孝行が再び陣頭指揮を執るが、チームは暗闇から抜け出せない。
4月から5月にかけて、連敗は「7」まで延びた。カップ戦も含めると9連敗である。