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2019年冬、ロッテを去る人、来る人。
若手を鍛え上げる首脳陣の本気度。

posted2019/12/28 11:30

 
2019年冬、ロッテを去る人、来る人。若手を鍛え上げる首脳陣の本気度。<Number Web> photograph by Kyodo News

戦力外となった島と同期入団の種市。来季から同じくチームを去った涌井が背負った「16」を引き継ぐ。

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永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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 年末年始恒例、NumberWeb版“プロ野球・ゆく年くる年”。全12球団の今シーズンの振り返りと新シーズンへの期待を綴る短期集中連載シリーズです。
 第3回はオフに多くの話題を提供した千葉ロッテマリーンズ。来季は佐々木朗希もさることながら、ウィンターリーグで力をつける若武者たちにも注目が集まる。

 2019年12月19日。衝撃のニュースが届いた。

 千葉ロッテ投手陣の支柱として働いてきた涌井秀章の金銭トレードがこの日、発表されたのだ。行き先は東北楽天。11月にチームリーダー・鈴木大地がFA移籍をしたライバル球団。近年の千葉ロッテを最前線で支えてきた投打のリーダーの移籍。SNSでは千葉ロッテファンが騒然としていた。

 その余韻が醒めやらないその日の昼の内に、今度はFAで東北楽天から獲得した美馬学の人的補償として酒居知史の移籍が発表された。今季、54試合に登板し5勝、25ホールドポイントを記録した大事なセットアッパーの1人。これには悲憤慷慨(ひふんこうがい)するファンの声が圧倒的多数を占めた。

 翌日のインターネットや新聞などの報道を読むと「苦渋の決断」「若返り」「先を見据えたブロック」「選手ファースト」といった、幾つかのワードが並べられていた。

 2015年にリーグ最多勝を獲得し、その年のクライマックスシリーズファーストステージを始め、数々の男気あるピッチングを見せチームを救って来た大黒柱と、入団からの3年間で12勝をあげ、先発およびリリーフも任せられる貴重な右腕だった2人である。来季以降の結果がどうこうと考える前にまず気持ちの整理が付かないというのがファンの素直な気持ちなのではないだろうか。

21歳島の引退に心が痛む。

 寂しさと言えば、島孝明の突然の引退にも心が痛んだ。

 2016年ドラフト3位入団の高卒3年目、まだ21歳。仮にプロに向かわず大学に進学していたら今頃、来秋のドラフトに向けて胸を膨らませている、そんな時期ではなかったか。

 球団は当初、育成枠での契約を彼に提示したようだ。だが、自信を喪失してしまったのだろうか。島本人は大学進学を希望し、今後は別の道を歩んでいくという。

 彼で思い出すのは2018年のシーズン中、筆者にこぼしたこんなひと言だ。

「(高校と違って)今は野球だけじゃないですか。そうなると色々と考え込んじゃう自分がいると言うか、それしかなくなってしまうので……。以前なら学校もあったから気を紛らせたりも出来たんですけど、そういうところでもプロは難しい世界だなって」

 当時、19歳か20歳になったばかりの若者である。そんな彼にここまで悩ませてしまうプロの在り方とはなんだろう? と、そのときに考え込んだ。

【次ページ】 期待の右腕を悩ませたイップス。

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