球道雑記BACK NUMBER
2019年冬、ロッテを去る人、来る人。
若手を鍛え上げる首脳陣の本気度。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2019/12/28 11:30
戦力外となった島と同期入団の種市。来季から同じくチームを去った涌井が背負った「16」を引き継ぐ。
期待の右腕を悩ませたイップス。
2017年のシーズン終了後、彼がイップスではないかという噂が立った。
台湾ウインターリーグで見せた彼の荒れた投球が、瞬く間にSNSを介して拡散され、一般のファンにも知れ渡り、たちまち千葉ロッテファンの多くが知る話になった。
それでも筆者は、あえて本人にそのことを振らずに一部始終を見守ることにした。
ロッテ浦和の室内練習場では、小野晋吾二軍ピッチングコーチと川越英隆現一軍ピッチングコーチ(当時は二軍ピッチングコーチ)が、必死になって彼の再生に取り組んでいた。2mのネットスローを繰り返しながら別メニューをこなす彼の姿が、どこかに隔離されたような空気も醸し出していて痛々しかった。彼は相当苦しんでいたに違いない。
ある日、彼はずっと胸の内に溜めていた想いを吐き出すかのようにこう気持ちを吐露した。
「どうしようというかどうしようも出来なかったので。本当になす術がなかったと言うか苦しい毎日でした」
目にはうっすら光るものが浮かんでいる。気持ちが昂るのを抑えあえて淡々と話しているようにも見えた。元々がトレーニング方法や練習方法、栄養学などを自ら進んで勉強するタイプだ。その生真面目さがより自分を深みに嵌めてしまったのかもしれない。
「メンタルの先生からは『以前の自分と比べるんじゃなくて、つい最近の自分と比較して今どうかを考えよう』とも言われました。『一番良い頃と比べたら、そのギャップで自分を苦しめてしまうからそうならないように』って」
井口監督の評価も上々。
そこからは二歩進んで、一歩下がる、そんな毎日が続いた。
そして2018年のみやざきフェニックスリーグ。文字どおり島は不死鳥のように復調する。このリーグで8試合に登板して防御率は0.00、その後の台湾遠征でも2試合無失点で結果を残した彼は、井口資仁監督からも高い評価を得ていた。そのときの気持ちを彼はこう話している。
「1年でここまで来れるとは自分自身も思っていなかったので今は凄くホッとしています」
「正直、この(プロの)世界で生きやすくなったところはあります。本当に迷って、迷って、『もう野球を辞めようかな』と思ったこともありましたし、そのときに比べたら今は全然、一日、一日の充実を感じるようになりました」