球道雑記BACK NUMBER
2019年冬、ロッテを去る人、来る人。
若手を鍛え上げる首脳陣の本気度。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2019/12/28 11:30
戦力外となった島と同期入団の種市。来季から同じくチームを去った涌井が背負った「16」を引き継ぐ。
涙が止まらなかったの初マウンド。
年が明けて3月、島はプロ入りしてから初めてZOZOマリンのマウンドに上がった。
事情を知らない人から見たら、ただのオープン戦の一コマだったかもしれない。でも、泣けた。マウンドで躍動する彼の姿を見て、涙が止まらなかった。
彼の名前が場内アナウンスでコールされる。スタンドから「しまーーっ」と叫びたい衝動に駆られた。いや、叫んでいた。
そして見事、1イニングを無失点、しかも三者凡退。
たった1イニングの登板とは言え、彼にしてみれば大きな大きな一歩だった。
140キロ後半から150キロを計測したストレートに、たびたび相手のバッターは差し込まれていた。長いトンネルを抜けて、いよいよ彼の出番がやって来たかと、ホッと胸を撫でおろした。
だから今年10月、千葉ロッテから彼の戦力外通告が発表されると「なんで?」の想いの方が強かった。彼と最後に言葉を交わしたのは、「おっ、髪切った?」とかそんな他愛もない話だ。今となってはそれも後悔。結局、いちライターの力じゃ何にもすることが出来なかった。だから一年の最後に描きたかったのは来年も記事に出来る選手のことではなく、むしろ彼の方だった。
種市は16番を、佐々木もやってくる。
島はある日、今季一軍で8勝をあげた種市篤暉のことをこんな風に言っていた。
「(一軍に)先に行かれて多少の悔しさは勿論なくもないんですけど、同期で入って、いつも一緒に練習やって来た仲間なので頑張って欲しいなと思うし、一軍で良いピッチングをして、勝ってくれたら自分も嬉しいなって思います。励みにもなっています」
同期入団で同学年の選手。入団1年目のときはいつも一緒にいたようなイメージもある。その種市が来季、涌井がかつて付けていた背番号16を付けてプレーする。これも時代の流れなのだろうか。だから別れを悲しんでばかりはいられない。
来春には大船渡高からドラフト1位で佐々木朗希がやって来る。
高校生としては日本人歴代最速の163キロを計測した超大型新人。ど本命中の本命を秋のドラフトで引き当てた。これほどの希望があるものか。