“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
市船が新監督で挑む初の選手権。
「ようやく勝負強さが出てきた」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/12/26 11:30
攻撃を牽引する10番鈴木唯人ら、注目選手が揃う市立船橋。監督、選手にとって初めての選手権に挑む。
選手たちにあった“モヤモヤ”。
では、なぜ“モヤモヤ”が生まれていたのか。10番を背負い、来季から清水エスパルスへの加入が内定するFW鈴木唯人はこう口にした。
「今年は絶対にどこかで苦しい時が来ることは覚悟をしていました。でもだからと言って監督が替わったとか、そういう周りのせいにしたくなかった。でも、うまくいかない時ほど、『どうしたらいいのだろうか』と考えすぎてしまっていました」
彼らは監督交代が、結果が出ないことへの「言い訳」になってしまうことが嫌だった。伝統や新しいものを積み上げることは非常に難しいことだと、選手自身も十分に理解している。昨年までコーチだった波多監督が変わらぬ情熱と積極的なコミュニケーションで向き合う姿に、なんとか必死で応えようとしていた。そう強く思えば思うほど、無意識のうちに、自分たちの本音が出せない状態に陥ってしまっていたのだった。
それが柏U-18戦後の話し合いを経て、風向きが変わった。
「全員の目標が日本一であること」
「自分たちがやるべきことから外れていたことに気づきました。それは個人のプレーの細部ばかり意識をしてしまい、一番重要な市船として球際の厳しさや運動量、切り替えを全員がやるということができていなかったんです」(鈴木)
「やっぱりみんなそれぞれ思っていることがあるんだなと思いました。あのミーティングで僕らが知らず知らずのうちに遠ざけることで出来ていた壁が壊れて、一気にみんなの距離が近くなった。結局みんな苦しんでいるんだ、いろいろ悩んでいたのは自分だけじゃないんだって、そこでみんなが分かったんです。
それに僕は怪我で2度も離脱していたので、キャプテンとしても、選手としてもチームの勝利に貢献できていなかった。だからこそ、言いづらかった面も正直ありました。でもレイソル戦以降は、全員の目標が日本一であることを前提に話し合いが行われるようになったし、練習でも『もっとこうしてくれ』、『こうしようよ』と、お互いが求めるようになった。コミュニケーションや連携が高まってきたことで一体感が生まれてきていると思います」(町田)
「レイソル戦までは試合中に声で解決するシーンなのに声が出ずに問題が大きくなってしまうシーンもあったけど、それがなくなっていって、よりお互いが言い合えるようになった」(石田)