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早稲田大→慶応大ラグビー部コーチ。
なぜ三井大祐は異例の道を歩んだか。
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byMasashi Oda
posted2019/12/20 15:00
早稲田ラグビーで育ち、慶応ラグビーをコーチングする三井大祐。彼のようなキャリアを歩む人は珍しいだろう。
ディスカッションができている。
ライズ。慶応用語だ。直ぐに立って次の動きは誰よりも速く。
「後悔はよくないですが、自分自身ではもっとできたと思います。学生に対して勝たせてあげられなくて申し訳なかった。このチームでよかった、慶応でよかったなと思ってもらうには勝つことだったので」
ライズだけでは勝てない。他のスキルや作戦のレベルアップ、欠けていたものは明確だ。来季へのスタートはすでに切っているという。
今年は1年生も多く起用することになった。
「栗原さんもどっちがいい、誰がいいと聞いてくれます。こちらの意見も言います。いい議論、ディスカッションができていると思います」
早稲田から来たという意識はチームの中には存在しない。最初の頃の不自由ないか、という気遣いも皆無、慶応の人だ。
「あの人いつも情熱あったなって」
充実した時間を過ごしているという。
「学生が出来なかったことが出来るようになったり、気づいていないことを気づかせてやれると幸せですね。手助けでいいんです。自分も指導者の方に恵まれてきたと思います。何を教えてもらったかというと、思い浮かばないんですよ。ただ情熱をもって接してくれた。学生が卒業して何十年か経って、あの人、いつも、情熱あったなって。それでいい」
「俺を手伝ってくれないか」
端的だが究極の誘い文句。人に頼られることの幸せに“赤黒”とか“黒黄”とか、ネクタイの柄は左右されない。三井は運命と挑戦という言葉を繰り返した。必然のタイミングの先の生きがいに恵まれてきた。
将来、早稲田のコーチ?
「運命とタイミングですね」
清々しい優男の笑顔だった。