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大迫勇也でも収められないなんて。
2戦11失点ブレーメンが迎えた危機。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byUniphoto Press
posted2019/12/21 11:40
世界レベルでも光る大迫勇也のポストワーク。しかし今のブレーメンに彼を生かすメカニズムはない。
クルーゼ移籍で大迫が3トップ中央。
普段は選手が退場するコンコースを通してサポーターの声が響くミックスゾーン内が、静寂に包まれています。
チームメイトの誰よりも遅く引き上げてきた大迫は、こちらの姿を見つけると一言「すいません」と言って右手を縦に切り、うなだれるようにロッカーへ引き上げていきました。
コーフェルト監督が採用する基本システムは4-3-3です。4バック、アンカー、2枚のインサイドハーフで形成する逆三角形の中盤、そして3トップの各ユニットがコンパクトネスを保ってスピーディに、アグレッシブにプレーすることを身上とします。
このチームの肝と言える3トップの中央には、昨季まで元ドイツ代表FWのマックス・クルーゼが君臨していました。クルーゼは1トップというよりもシャドープレーヤーのような役回りで、ピッチを広範囲に動き回って味方選手とコラボレーションして、攻撃を活性化させる任を担っていました。
そのクルーゼがフェネルバフチェへ移籍した今季、コーフェルト監督は3トップの中心に大迫を据えたのです。
大迫の負傷離脱からチームは暗転。
大迫は、ここまでクルーゼとは異なる個性で攻撃を牽引してきました。
彼のストロングポイントは、懐の深いポストワークとペナルティエリア内でのフィニッシュワークです。自身の特長を生かすために、彼はできるだけピッチ中央から逸脱せずにプレーし、チームメイトのアタックを促進させるとともに、自身のゴールをどこまでも希求していました。
だが、大迫がハムストリングを痛め戦線離脱した直後のリーグ第5節RBライプツィヒ戦で今季3敗目を喫したブレーメンは、その後の5戦で連続ドローと勝ち星に見放され、このあたりからコーフェルト監督の采配に迷いが生じ始めます。
大迫が復帰した後もボルシア・メンヘングラッドバッハやシャルケなどの上位チームに敗戦するなかで、コーフェルト監督は3バックにモデルチェンジしたり、最前線を大迫とラシカの2トップにしたりなど修正を施しますが成果を得られず。件のパダーボルン戦で痛恨のホーム敗戦を喫するに至り、チームには正真正銘の危機が訪れていました。