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大迫勇也でも収められないなんて。
2戦11失点ブレーメンが迎えた危機。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byUniphoto Press
posted2019/12/21 11:40
世界レベルでも光る大迫勇也のポストワーク。しかし今のブレーメンに彼を生かすメカニズムはない。
バイエルンに1-6、中2日で……。
2019年12月14日、ブンデスリーガ第15節のバイエルン・ミュンヘンvs.ブレーメン。前節に引き続き最前線のポジションで先発した大迫は相棒のラシカが鋭いカウンターから相手DFジェローム・ボアテンクを出し抜いて先制点を挙げた際に、「よし!」とばかりに小さく拳を握りました。
しかし、その後はバイエルンの猛威に晒された味方守備陣がパニックに陥り、無得点のまま67分に交代となり、チームは1-6で惨敗しました。
このとき彼はミックスゾーンでペン記者にしっかり取材対応しましたが、やはり言葉数は少なく、打ちひしがれている様子がうかがえました。
続く第16節のマインツ戦は、バイエルン戦から中2日の平日ナイトゲーム。それでもベーザー・シュタディオンには3万7720人の観衆が詰めかけましたし、ホームチームは前節の大敗を払拭すべく奮起しなければならなかったはず。
それなのに前半だけで4失点を喫したうえ、後半も主導権を奪い返せず苛立つ仕草を見せるなど、あるまじきプレーを繰り返していました。
2戦連続の大敗にスタンドも閑散。
僕はふと思いました。温和なブレーメンサポーターは、こんなとき、どんな振る舞いを見せるのだろうと……。
自チームが失点を重ねる毎にスタジアムが静かになります。前半終了時にはブーイングが鳴り響きましたが、その叱咤の声もピッチ上の選手へは届きません。81分にマインツFWのジャン・フィリップ・マテタが止めの5得点目を決めると、サポーターが次々に階段を昇って帰路へつき始めました。
ブンデスリーガのサポーターはクラブへの愛情を隠さず、敗色濃厚でも試合終了まで選手の勇姿を見守る方々が多いのですが、この日のベーザー・シュタディオンは閑散としたスタンドに露出した緑色の席だけが、静かに0-5という屈辱の終焉を見届けているように見えました。
大迫は、またも69分という早い時間帯に交代を命じられました。コーフェルト監督は「前半は不可解で我々のパフォーマンスは破滅的だった」と振り返り、MFのクラーセンは地元記者からの敗戦の要因を問う質問に対して「わからない」と3度繰り返していました。
それでもブレーメンのマネージングディレクターのフランク・バウマン氏は、2023年の夏まで契約を延長した指揮官への信頼を強調していました。