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火付け役はフラメンゴのジェズス。
ブラジルは空前の外国人監督ブーム。
posted2019/12/21 09:00
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph by
Masaki Shimozono
クラブワールドカップの歴史において、初めて逆転勝利で決勝に駒を進めたブラジルの超名門、フラメンゴ。3年後のワールドカップ(W杯)カタール大会でも会場となるドーハのハリーファ国際スタジアムで、アジア王者のアルヒラルに3-1で勝ち切ったこのチームの監督は、今やブラジルサッカー界で時の人である。
ジーコを擁してクラブ世界一になった1981年以来となるコパ・リベルタドーレス制覇に加えて、ブラジル全国選手権も優勝。南米王者と国内チャンピオンの二冠を勝ち取ったのは、ペレが牽引した1963年のサントス以来という偉業だが、特筆されるべきは超攻撃的なスタイルを貫いての栄冠ということだ。
ブラジルはもちろん、オーストラリアやポルトガルなど世界各国から集まった約10000人のフラメンゴサポーターがスタジアムで歌い上げたのは、異国からやってきた指揮官を讃えるチャントだった。
オーレ、オーレ、オーレ、オーレ、ミステル、ミステル――。ミステルとは「ミスター」のポルトガル語読み。率いるポルトガル人、ジョルジェ・ジェズス監督の愛称である。
積極的に高いDFラインを保つ。
今年6月、フラメンゴの監督に就任したジェズスは攻撃サッカーをこよなく愛するブラジル人好みのスタイルに、欧州風のエッセンスを混じえながらチーム作りを進めてきた。
自陣に人数をかけたブロックを形成し、手堅い速攻を志向するチームが増えるなか、ジェズス監督が取り入れたのは欧州ではごく当たり前の前線からアグレッシブにプレスをかけ、高いDFラインを保つサッカーだった。
今年6月、バイエルンから加わったラフィーニャは、アルヒラルと戦う前日会見で「ミステル」とともに登壇し、こう言うのだ。
「ミステルは多くの素晴らしいものをブラジルのサッカー界にもたらしてくれている。ヨーロッパのスタイルをブラジルサッカーに取り込んでいるんだ。僕たちは非常に多くのことを彼から学んでいるし、ブラジルのサッカー界をよりよいものにしている」
ブラジルの名門クラブで監督として認められるのは至難の業である。結果に一喜一憂するサポーターだけでなく、口うるさいクラブのOB連中も納得させなければいけないのだから。