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大迫勇也でも収められないなんて。
2戦11失点ブレーメンが迎えた危機。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byUniphoto Press
posted2019/12/21 11:40
世界レベルでも光る大迫勇也のポストワーク。しかし今のブレーメンに彼を生かすメカニズムはない。
女性が多いアットホームな雰囲気。
奥寺氏がプレーしていた時代のベーザー・シュタディオンにはトラックがありましたが、2005年の改修によって今は4万2100人収容のサッカー専用スタジアムとなっています。
チームカラーは緑と白。サポーターは地元に醸造所があるメーカーのビール『ベックス(Becks)』を手にスタジアムまで行進しますが、他クラブのサポーターに比べるとずいぶん穏やかな印象を受けます。
サポーター諸氏の男女比は7対3くらい。女性が多い感じが、和やかな空気を作り上げているのでしょうか。川から吹き付けてくる風は強く、幅の狭い屋根の隙間からは雨水も入り込んできますが、なんともアットホームな雰囲気です。
2019年12月8日。この日はブンデスリーガ第14節、パーダーボルンとのゲーム。前節のヴォルフスブルク戦でリーグ戦9試合ぶりとなる勝利を飾っていたブレーメンは、リーグ最下位の相手を叩いて上昇気流に乗りたいところでした。
だが、試合は予想に反して一進一退、いや、むしろパーダーボルンの丁寧なポゼッションワークにホームチームが難儀する展開が続きました。
「オオザコ、しっかりしてくれよ!」
4-3-3の3トップの中央で先発した大迫は、右にレオナルド・ビッテンコート、左にはミロト・ラシカを従えて攻撃を牽引しますが、なんせ中盤のサポートが乏しく孤立状態に陥っていました。得意のポストワークも相手CBのハードチャージを浴びて精度が落ち、何度もボールを逸すると、僕の周りで観ていたブレーメンサポーターが一様に不満の意を唱え始めました。
「オオザコ! しっかりしてくれよ!」
うーん、なんだか不穏な雰囲気に……。先述した通り、普段のブレーメンサポーターはどちらかというと穏やかです。チームが劣勢のときはゴール裏のサポーター集団とともにメイン、バックスタンドの観衆も立ち上がって手拍子をしながら鼓舞するのが常。
でも、この日のサポーターは容赦なく、大迫に限らず様々な選手へ罵声を浴びせていました。
結局、大迫はチームのなかで最も早い58分にフロリアン・コーフェルト監督から交代を命じられました。入れ替わりで出場したリーグ最年長(41歳)クラウディオ・ピサロがサポーターの期待を背に颯爽とピッチへ向かうなか、足取り重く自軍ベンチへ……。
0-0で試合が推移するなか、僕は取材の準備で早めにミックスゾーンへ向かいました。室内に設置されたテレビ画面には、後半アディショナルタイムの表示と、パダーボルンの選手がゴールを奪って歓喜するシーンが映し出されていました。