ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
大迫勇也でも収められないなんて。
2戦11失点ブレーメンが迎えた危機。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byUniphoto Press
posted2019/12/21 11:40
世界レベルでも光る大迫勇也のポストワーク。しかし今のブレーメンに彼を生かすメカニズムはない。
「仕方ねーだろ。それでも……」
少し遡り、12月8日のパダーボルン戦後のブレーメンの夜。宿泊するホテルのロビーで、ブレーメンのサポーターが下を向いてソファに腰掛けていました。彼の首からはだらんとクラブマフラーがぶら下がり、その先がしなだれかかるように床へ付いています。
その横で、対照的に背筋をピンと張らせた男性が、友の肩に手を置いて言いました。
「仕方ねーだろ。勝つときも負けるときもある。それでも俺たちがサポートするクラブはたった1つ。ベルダーしかないんだぜ」
危機に面しても潔く帰路につく「童話の街」ブレーメンのサポーターは、その心の内に揺るぎないクラブへの愛を宿しているのです。
静けさは、情熱の物差しにならない。弱くても、不甲斐なくても、決して見捨てない。そんなブレーメンサポーターの真摯な想いに、クラブ、チームの面々が応えてくれたら。クリスマス気分が漂うドイツの古都で、僕は、かつて憧憬の念を抱いたこの地で、そんな思いに耽っていたのでした。