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「バレンティン移籍」でNPBに疑問。
FA規約に見直しは必要なのか?
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2019/12/15 11:50
来季から日本人扱いとなるバレンティン。ソフトバンク移籍が濃厚と見られている。
拒む根拠がないサイドレター。
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第66条(保留の手続)
1 球団は毎年11月30日以前に、コミッショナーへその年度の支配下選手のうち次年度選手契約締結の権利を保留する選手(中略)を全保留選手とし、全保留選手名簿を提出するものとする。
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ここでは球団優位の保留権がうたわれているのだが、サイドレターの文言によって事実上骨抜きにされているわけだ。FA権を保有していなくても、力のある外国人が契約の切れ目に移籍できる理由はここにある。実際には外国人にのみ許されている特権なのだが、野球協約のどこを探しても「外国人には認める」などと明記されていない。裏を返せば日本人選手が強力な代理人を立て、徹底的にサイドレターを要求してきた場合、拒みきる根拠も存在しない。
規約の見直し、NPBの見解は?
球界の憲法を無効化するサイドレターや、FA規約をないがしろにするバレンティンの移籍について、本来なら球界内部から問題提起する声が出てくるべきだろう。大リーグから日本にやってきた外国人が、大リーグに復帰する権利を妨げるわけにはいかないだろうからすべての選手に「保留条項」を適用するのは無理がある。しかし、国内では引き抜き放題、FA補償もうやむやというのもいかがなものか。外国人選手を保護すべく権利は認めた上で、秩序を保つ。明記のない特権がまかり通る現状をただし、一刻も早く法を整備しなければファンの支持も得られないのではないだろうか。
なお、NPBに対して「野球協約のフリーエージェント規約第10条(球団の補償)は、FA宣言選手が外国人の場合にも適用されるか」との質問を投じたところ、「明記はしていないが、日本人選手、外国人選手問わず適用される」との回答をもらった。今回の一件で議論される論点になるだろう。