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「バレンティン移籍」でNPBに疑問。
FA規約に見直しは必要なのか? 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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posted2019/12/15 11:50

「バレンティン移籍」でNPBに疑問。FA規約に見直しは必要なのか?<Number Web> photograph by Kyodo News

来季から日本人扱いとなるバレンティン。ソフトバンク移籍が濃厚と見られている。

来季から日本人選手扱いになる。

 この問題の裏に潜んでいるのは、なぜソフトバンクはバレンティン獲得に動いたのかということだ。

 リーグ優勝こそ逃したが、ポストシーズンは圧倒的な強さで制した。野手にはデスパイネ、グラシアル(いずれも12月13日時点で契約合意前だが)を擁し、外国人も充実している。加入によりチームの大幅なポジション変更もありうる中で、バレンティン獲得に踏み切った大きな理由は、野球界においては来季から「日本人選手」として扱われるからだろう。

 FA権を取得した外国人は、一軍4人(すべて投手あるいは野手は不可)の外国人枠から解放される。このルールの根本にあるのは、長年日本球界で成績を残した選手本人と、少し調子の上がらないシーズンがあっても契約を結んできた球団へのご褒美である。しかし、その資格を得たと同時にFAで移籍してしまうと、せっかく熟した果実を食べられるのは「旧球団」ではなく「獲得球団」ということになる。

FAしたケースは「Cランク」の許だけ。

 このルールができて以降、日本人扱いとなった外国人は確認できただけでもバレンティン含め10人いる。うち、FA移籍したのは許銘傑(シュウ・ミンチェ)の1例だけだ。西武で2011年に6勝2敗1セーブ、22ホールド、防御率1.98という好成績を収め、FA宣言してオリックスに移籍。翌シーズンは0勝3敗、1セーブ、10ホールド、防御率5.29とあらゆる数字を落としている。許のケースは補償不要の「Cランク」だったことが、FA移籍を可能とした要因だと思われる。

「日本人扱い」を勝ち取ったシーズンに、すぐさま移籍したケースも許とホセ・フェルナンデスのみのようだ。許と同じ2011年オフに西武から楽天に移籍。自由契約公示をへているため、もちろん何の補償も発生してはいない。

 このときのフェルナンデスもそうなのだが、今回のバレンティンも「旧球団」は残留交渉を行っている。それを振り切り、なおかつ日本シリーズ後の宣言期間もスルーして12月2日に晴れて自由契約を勝ち取っている。「当該選手」からすればFAの資格の有無にかかわらず、フリーエージェント(自由契約)になれることがわかっている。それは球団とかわす契約書に「11月末日までに双方が合意に達しない場合は、球団は保留者名簿に記載しない」旨が盛り込まれているからだ。いわゆるサイドレターだが、ここにも問題はある。球界の憲法である野球協約の第9章保留選手には、こんな条項があるからだ。

【次ページ】 拒む根拠がないサイドレター。

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