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「バレンティン移籍」でNPBに疑問。
FA規約に見直しは必要なのか?
posted2019/12/15 11:50
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
ウラディミール・バレンティンのソフトバンク入りが確実視されている。
ヤクルトでの9年間で通算288本塁打、2013年にはシーズン60本の日本記録を打ち立てている、本物のスラッガーである。スポーツ各紙の報道によると、ソフトバンクは2年総額10億円の好条件でオファーし、愛着のある背番号4も用意しているとのことだ。
実績のある外国人選手が、ビッグクラブに引き抜かれる。野球界ではよく見られる構図である。それはそれで問題(後述)だが、今回の移籍劇は少しばかり様相が違う。というのも、バレンティンはFA権を取得したからである。にもかかわらず、権利を行使することなく、12月2日に自由契約選手として公示され、移籍する。FA移籍との決定的な違いは、ソフトバンクからヤクルトへの補償の有無である。野球界が定めるフリーエージェント規約の第10条(球団の補償)にはこう書かれている。
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1 この組織に所属する他の球団(旧球団)に在籍していたFA宣言選手と選手契約を締結した球団(以下「獲得球団」という。)は,本条に定めるところにより,当該選手の旧球団に対し金銭及び選手を補償する(以下「FA補償」という。)。
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FA移籍と自由契約。
「この組織」とはNPBであり、ここでは「旧球団」がヤクルト、「獲得球団」がソフトバンク、「当該選手」がバレンティンということになる。読んでわかるように、どこにも「外国人選手を除く」とは書かれていない。
つまり、FA移籍ならバレンティンを失う代わりにヤクルトは金銭及び選手を補償されるはずなのに、自由契約による移籍では1円も得られない。得をしたのは補償の分をバレンティンへの年俸に回せ、より優位に強奪交渉を進められるソフトバンクと、より大きな契約を得られるバレンティンということになる。