プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人からメジャー目指す山口俊。
マウンドと“鈍感力”が意外と合う?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2019/12/13 20:00
記者会見でメジャーリーグ挑戦を表明する巨人の山口俊投手(中央)。左は原監督、右は今村球団社長。
制球力アップを示すデータ。
自己ベストともいえる成績を残しただけに、今季の投球データ(DELTA社サイト)は、多くの数字が前年より少しずつアップしている。その中で特に目を引くのが、制球力を示すいくつかのデータだった。
今季の山口は四球率が前年の9.3%から8.5%へと減少し、1打席あたりの四球に対して奪三振の割合がどれだけ多いかを示すK/BBが前年の2.4から3.13と飛躍的に上昇している。
同時に全打球におけるゴロ割合も前年の43.2%から49.2%へとアップ。それだけ低めへの制球力が上がっていることが見えてくる数字が並ぶのだ。
低めに制球された球を投げ、その結果として被本塁打数は昨年の18本から8本と激減。大事なところで手痛い一発を食うという悪いパターンからの脱却が、今年の進化の形だったことが見てとれる。
いい意味での“鈍感力”。
もちろんこの進化には様々な要因が考えられるだろうが、メジャー仕様の固いマウンドが見事にフィットした――そのことも決して無関係ではなかったはずである。
いわゆる日本的な下半身の粘りで投げる投手はメジャーに行ったら苦労するというのは、1つの定説だ。その説からすれば、山口は真逆でメジャーにいったら思った以上にフィットできる可能性を持った投手なのである。
しかももう1つ、山口がメジャーで成功する要素となると思うことがある。
それは山口が持ついい意味での“鈍感力”だった。
マウンドの変化についての水野コーチとの会話に戻ろう。メジャー仕様のマウンドへの適応力で山口をイチ押しした同コーチは、だがこんなことを付け加えていたのである。