マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大学野球の精鋭50人の中でも光った、
殺気漂う並木秀尊のタッチアップ。
posted2019/12/15 09:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
「侍ジャパン大学代表選考合宿」の2日目。
松山・坊っちゃんスタジアムの雄大なスタンドを見上げて、愕然とした。
スタンドに、高校球児の姿が、1人も見えない。
来年の国際試合に備えて、「侍ジャパン」の大学生チームを結成するための“オーディション”にあたるこの合宿。
全国の大学リーグから推薦された腕利きたち50名が松山に集結。
3日間の合宿での練習、紅白戦でその腕を競い、そこで認められた選手30数名が、来春の「平塚(神奈川)合宿」に進む。
合宿初日の土曜日は授業のある高校もあろうし、今期の練習試合期間の最終日でもあったので、スタンドに高校球児の姿がなくてもしょうがないのかな……と思ったが、学生野球の第一線50人が集まるこの合宿は高校球児たちが学ぶにはこれ以上ない絶好の機会なはずである。
ならば2日目の日曜日には、きっと結構な数の高校球児たちがスタンドを埋めるのでは……。
勝手にそう決めつけていたら、スタンドに詰めかけたのはプロ野球のスカウトたちばかりで、まさに拍子抜け……そこを通り越して、ショックだった。
こんなもったいないことはないと、今からでも、「やってますよ!」と呼びに行きたいほどの思いだった。
高校球児にとって貴重な機会だったのでは。
聞けば、前日の土曜日には、この松山で四国の高校野球の「監督会」が行われたという。
ならば余計に、選手たちを連れてきて、土曜は試合、日曜は学生野球の最高峰の選手たちのプレーを見学、シーズンの締めくくりのこの時期に、これ以上ない高校球児の「週末」が過ごせたのではないか。
ある監督さんに訊いてみたら、この合宿は知っていたし、不公平になるから見学ご法度とのお達しもなく、もしかしたら、定期試験前だったからかも……ということだった。
そこに落ちている「宝物」をまたいで歩いてしまったような、なんとも悔しいほどにもったいない思いがわいたものだった。