令和の野球探訪BACK NUMBER
獨協大初のプロ野球選手になる?
スカウトも驚く並木秀尊の「足」。
posted2019/12/05 11:50
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
「誰も知らない男」が表舞台に躍り出た瞬間だった。
11月30日から3日間にかけて、侍ジャパン大学代表(大学日本代表)の選考合宿が愛媛県・坊っちゃんスタジアムで行われた。この選考合宿では、過去に大山悠輔(白鴎大学→阪神)ら多くの大学生選手、特に地方大学の選手が脚光を浴び、飛躍のきっかけを掴んできた。
その初日に行われた50m走の計測でトップに立ったのは、中学時代の成績から「サニブラウンに勝った男」の異名を持つ本命・五十幡亮汰(中央大)ではなく、今夏の代表合宿の計測(その際は30m)でトップだった対抗・小川晃太朗(同志社大)でもなく、首都大学野球2部リーグでプレーする大穴・並木秀尊(獨協大)だった。
「あの手前にいる子です」
合宿開始2日前となる獨協大のグラウンドに並木の姿はあった。身長170センチの外野手。練習開始前に目立つことはなく、東北福祉大出身の熱血漢・亀田晃広監督に「あの手前にいる子です」と指されてようやく存在に気づく。
だが、プレーをまじまじと見ていると野球センスの高さが随所に感じられた。
キャッチボールの捕球がワンバウンドでもグラブに吸い付くように収まっていく。送球もすこぶる強肩というわけではないが、正確に相手の胸に鋭く吸い込まれる。そして、近くで見るとその小さな体に引き締まった筋肉が無駄なく付いていることが分かった。打撃練習を観ても当て勘が良く、たまたま居合わせたスカウトも「センスいいね」と呟いた。
現在、獨協大は首都大学リーグ2部に所属。過去に大学代表やNPBに進んだ選手はいない。スポーツ推薦もなく、選手たちは指定校推薦や楽ではない一般入試に合格して入部してきた選手たちだ。それでも亀田監督の熱心な指導や選手たちが自主的に前向きに取り組む姿勢は実り、近年では2014年秋から2015年春は1部リーグを戦い、ここ数年もスポーツ推薦を利用できる他大学を抑えて、常に2部の上位に位置している。