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引退・明神智和の魂は今もガンバに。
遠藤保仁、山口智、藤春廣輝の秘話。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byGetty Images
posted2019/12/06 11:50
明神智和(右端)と遠藤保仁。ガンバ大阪の魅力的な攻撃スタイルのど真ん中には常にこの2人がいた。
技術が高くて黒子ができる凄み。
そんな気遣いを「そういうところまで気を配ってくれたのが印象に残っている」と話す山口ヘッドコーチだが、ガンバ大阪ではCBとして後方から明神のプレーを見続けてきた。
ジェフユナイテッド市原でデビュー当時、ボランチだった山口ヘッドコーチだからこそ分かる明神の凄みは、その技術の高さである。
「明さんは下手だから黒子をやっているわけじゃない。ミスが少なくて、基礎技術が高いし、安心してボールを預けられた。それに攻撃時も、前に出て行くところの嗅覚があるし、僕らが前に攻め上がっても絶対にカバーしてくれているやろうなという安心感もあったね。ああいうタイプの選手は今後も出てこないだろうなと思う。僕が思うに単なるボランチというよりは中盤の選手だった」
絶妙の距離感と阿吽の呼吸が全盛時のガンバ大阪のパスサッカーを支えていたが、西野監督が嫌った「パスのノッキング」を中盤で起こすこともなく、明神はシンプルだが、効果的にボールをさばくのだ。
シンプルにつなぐからやりやすい。
遠藤も言う。「シンプルにつなぐのは明さんの特長だったし、周りの僕らからしてもやりやすかった。ボールが来るタイミングも分かりやすかったしね」
ガンバ大阪でピアノを運び続けた男のこだわりは「試合中にしっかり闘う姿勢や、100%を出し切るのは自分の特長。それをどんな試合でも見せようとは思っているが、それプラス、守備の際の技術や自分のキャラクターを見せるということ」(明神)だった。
そんな「明神イズム」は今でもチームで確かに受け継がれている。
ガンバ大阪が今季2度目の連勝を飾った11月30日の松本山雅戦。両チーム最多の走行距離12.8キロを記録し、2試合連続でスプリントが40回に達した藤春廣輝は、その驚異的な走力でチームを支えてきた1人である。