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引退・明神智和の魂は今もガンバに。
遠藤保仁、山口智、藤春廣輝の秘話。
posted2019/12/06 11:50
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph by
Getty Images
長野パルセイロで過去3シーズン、J3のカテゴリーを戦ってきた明神智和が今季限りでの現役引退を発表した。その翌日となる12月3日、かつての僚友だった遠藤保仁に驚きは全くなかった。
「知っていましたよ」と話す遠藤にはこの秋、明神本人からLINEを通じて「今年で辞めようと思っている」と連絡があったという。
ボランチというサッカー用語を生み出したブラジルは、このポジションをしばしば、こう表現する。
カレガドール・デ・ピアノ(ピアノの運び手)。
ピアニストとなる攻撃のタレントのために、重いピアノを運ぶ労働者、つまるところ黒子である。
明神がピアノを運び、遠藤が奏でる。
10年間所属したガンバ大阪で、ピアノを運び続けてきた明神だったが、そのピアノの鍵盤を叩き、攻撃サッカーという魅惑のメロディを奏でてきたのが遠藤だった。
チーム内での役割はまるで対照的だが遠藤は言う。
「中盤から前の選手を気持ち良くプレーさせる部分においてかなり貢献した選手。僕らが後ろを気にせず、前に攻めに行けたのは“明さん”がいたからこそ。お互いの信頼関係は試合の中でもあったし、僕がこれだけやって来られたのも明さんのお陰と言っても過言ではない」
その言葉は決して、社交辞令ではない。個人にスポットライトが当たるパフォーマンスを好まないガンバ大阪の大黒柱が、一度だけ、飛びっきり気が利いた「仕掛け」を用意した1日があった。