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浦和がACLで痛感した変化の必要性。
微調整で済む段階は過ぎ去った。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byGetty Images
posted2019/11/26 19:00
ACL準優勝はもちろん誇るべきことだ。しかし同時に、浦和は変化の必要性を痛感したことだろう。
浦和というチームの地力が落ちている。
昨季の浦和は、途中就任したオズワルド・オリヴェイラ監督がACL出場権獲得に執念を見せた。就任時点でリーグ戦の成績が厳しかったこともあり、天皇杯の優勝にかなりの力を割いた。
それはロシアでのワールドカップ(W杯)を戦い終えてチームに合流した遠藤航(現シュツットガルト)と槙野にオフを与えず、「天皇杯が重要なんだ」と語りかけて当時J2の松本山雅と対戦した7月11日の3回戦に出場させたことからもうかがわれる。
もちろん、天皇杯というタイトルは素晴らしいものだ。しかし、チャンピオンシップに阻まれてリーグ優勝のタイトルこそ逃したものの、年間で最も多い勝ち点を積み上げてACLに出場して優勝した'17年とは過程が大きく違うのは事実だ。
浦和のチーム力は、もしかしたら「日本代表」というキーワードからも推し量ることができるかもしれない。
2年前のチームで言えば、槙野と遠藤に加え、西川周作も代表チームの常連であり、決勝の直前には興梠と長澤和輝も欧州遠征に招集された。宇賀神友弥は春の時点で選出され、柏木も常に招集候補と名前が挙がり続けた。
しかしながら、今年のチームはどうだろうか。前述の彼らはそうした立場から遠ざかった。W杯の翌年であり、代表チーム自体に世代交代の流れはあるが、次の世代でチャンスを掴んだ選手も出ていない。
だから、浦和にとって今年のACL決勝はギリギリのところでタイトルに手が届かなかったという感覚よりも、'12年のミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現コンサドーレ札幌)就任で始まった1つのサイクルに区切りがついた感覚が強くなった。
微調整ではアジアの頂点に届かない。
来季、J1に残留したとしても国内に専念するのは変わらない。では、ちょっとした修正を施して2年後の再チャレンジを目指せば良いのかと言えば、それは違うのだろう。
槙野の言葉を借りれば「コテンパンにやられた」決勝は、もう微調整ではこのレベルのチームを倒すことを望めないという明確なメッセージを浦和に投げかけただろう。
「浦和からアジアへ、アジアから世界へ」というポリシーを掲げてきた浦和だからこそ、覚悟を持ってチームを変革するべきだ。そこには、高くジャンプする前にしゃがみ込むような時間すら必要とするかもしれない。
それでも、目指す場所を明確にしているのであれば、その道筋を辿る意志を見せるべきだ。