“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ぶっつけ本番でも光ったDF原輝綺。
堂安律、久保建英との連係に高評価。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byGetty Images
posted2019/11/22 08:00
U-22コロンビア戦では劣勢の状況でピッチに入った原輝綺。慣れない左SBでの出場だったが、堂安らとの崩しでチャンスを作った。
U-20W杯、コパを経験して。
筆者が彼に大きな成長を感じたのは、ボールの受け方である。
もともとトラップの技術に長けている原は、サイドでボールを受ける時はボールを晒しながら、相手の動きを読み取り、仕掛けるか、パスか、タメを作るかを判断することが多い。しかし、この試合では足元深い位置にファーストタッチでボールを収め、相手DFにボールを隠すようにトラップをしていた。
「南米の選手は足を伸ばして食いついてくる傾向がある。なので、今日は自分の足元の真下かちょっと後ろに置き、さらにフリックなどを見せておけば、相手も僕のところに飛び込まなくなるし、動きも止まる。そこを逆手にとって、自分のプレーに余裕を生み出しました」
2017年にはU-20W杯でベンタンクール(ユベントス/イタリア)がいるウルグアイやソテルド(サントス/ブラジル)がいるベネズエラと戦った。さらに今年のコパ・アメリカでもチリ戦にフル出場するなど、南米の強豪国とガチンコ勝負を経験。世界を相手にしたときのリスクマネージメントと自らの力を発揮する術を着々と身につけてきた。
自分の本当のポジションはどこか。
もちろん、経験を積んだだけではない。洞察力も意欲的に磨き上げてきた。
「これまではあまりサッカーの映像を見ることはなかったんです。でも、いろんなポジションをやるにあたって、それぞれのポジションで起こる現象、やるべきことをしっかりと勉強する必要があると強く思うようになって、積極的に映像を見るようになりました」
原は市立船橋高校からアルビレックス新潟に入り、今季からサガン鳥栖に完全移籍した。代表活動と同様に所属チームでもCB、左右のサイドバック、ボランチ、ウィングバックとあらゆるポジションを経験している。自分の本当のポジションはどこなのか。試合ごとに変わる状況は、当然、悩みとなっていた。
「どこで出るかわからないのは本当に難しい。あまり聞こえは良くないかもしれませんが、ストレスの方が大きかったんです。やっぱりそこのポジションを極めている選手に対して、僕に何ができるのかというのを、明確に見出せていなくて、きつい時期の方が長かったです。特に所属チームだけでなく、最近は代表でも変わるので本当に難しかった。
でも、どのポジションで出てもアベレージ以上のものを出さないと、僕の価値は曖昧になってしまう。何かをしなければと思った時に、思い立ったのが僕の中でサッカーの映像をより意図的に細かく見ることだったんです。
誰かのプレーが好きとか、チームが好きとかではなくて、自分がやるポジションすべての参考になるプレーをピックアップしたり、『今日はサイドバックの映像を見よう』とか自分で決めて見る。視野、プレーの工夫、セオリー、そして周りとの連係などをチェックして、イメージを膨らませていくんです。そのイメージがいざピッチに立った時に、どのポジションに入っても、自分を助けてくれる要素になる。そこは大きく変わったと思います」