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中野友加里が紀平梨花の技術を解説。
トリプルアクセルのその先へ……。
text by
中野友加里Yukari Nakano
photograph byAsami Enomoto
posted2019/11/19 18:00
スケートカナダでは2位となった紀平梨花。来るNHK杯、そしてグランプリファイナルでの連覇に期待がかかる。
他の質の高いジャンプにも注目すべき。
アクセルジャンプに入っていく軌道の角度としては、構えの姿勢から斜め45度に向かっていくのが理想的だと思います。
トリプルアクセルを高確率で決めている紀平梨花選手も、45度の角度でトリプルアクセルに入っています。教科書のお手本のような軌道と角度で踏み切っているうえ、跳ぶ前の構えも短く、回転軸を作るまでもコンパクトで速いです。尚且つ先述と重複しますが回転軸も細く速く、空中姿勢も美しいです。着氷後の流れが良いのでスピードも落ちることなく、演技全体の流れが途切れません。さらっとトリプルアクセルを跳んでいることも、プラス評価につながります。
ただ、紀平選手はトリプルアクセルばかりに注目されがちですが素晴らしいのはトリプルアクセルだけではなくどのジャンプを取っても質の良いジャンプを持ち合わせ同じ事が言えます。
特にコンビネーションジャンプ。
コンビネーションジャンプは2つ目を控えていると、1つ目のジャンプで「流れ良くスピードを落とさないようにキレイに跳ばなくては!」というプレッシャーを感じるものですが、紀平選手は、コンビネーションジャンプのスピードが全く落ちません。これは本当に素晴らしい武器です。1つ目のジャンプが難しいとスピードを跳ぶ前に落としがちになってしまいますが、全くそれを感じさせません。
技術と表現の面でバランスの取れた選手。
紀平選手のその持ち味はジャンプだけではないのが特徴とも言えます。スピン1つとっても柔軟性が活かされ、ポジションが明確できれいです。演技では上半身の身のこなしが柔らかく体全体をうまく使っていてとても美しいです。
技術面が優れていると表現面が追い付かなくなってしまうこともありますが、紀平選手は双方バランスの取れた選手と感じます。腕を動かす時には必ず顔そして上半身が付いて、指先まで意識が行き届いています。ステップでも、踏み込みが甘くなりがちですがディープエッジにのってしっかり強弱もついていますし、指先、顔の表情もステップと同時にできています。こうしたことも演技構成点の高い評価につながっています。ミスの後にもレベルを取りこぼしたりしない、ハートの強さ、冷静な判断力も感じます。