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バロテッリ激怒の人種差別発言。
撲滅できないセリエAが抱える闇。 

text by

神尾光臣

神尾光臣Mitsuomi Kamio

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photograph byUniphoto Press

posted2019/11/19 11:00

バロテッリ激怒の人種差別発言。撲滅できないセリエAが抱える闇。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

人種差別に激昂したバロテッリが、高くボールを蹴り上げた瞬間。彼の怒りのボルテージが伝わってくる。

過激なファンを敵に回せない闇。

 人種差別は良くないと言われながら、撲滅のための運動が強まらない今のイタリアである。

 国民の生活保護のため移民排斥を訴える政党『同盟』のマッテオ・サルビーニ書記長は「バロテッリの問題より雇用の創出が大事」とにべもなく語った。人々の意識が高まりにくいのも問題だが、ベローナが処分に消極的などころか、問題行為の存在を認めようとしなかったのが気になるところだ。

 ベローナは前述のケシエの件についても、やはり「人種差別的な行為はなかった」との立場を取っていた。このクラブ自身がウルトラスから度々厳しい非難や攻撃に晒されており、過激なファンを敵に回せない苦しい立場が窺い知れる。

「ウルトラスに圧力を掛けられて」

「実のところ、これはベローナだけでなくイタリアのどのクラブにも共通している問題だ」

 サッカー協会や政局関連にも精通する一般紙『ラ・スタンパ』のグリエルモ・ブッケリ記者は、現状についてこう解説した。

「多くのクラブがウルトラスに圧力を掛けられており、たとえ1人か2人であろうが処分となると二の足を踏んでしまう。ラツィオのクラウディオ・ロティート会長のように、攻撃を覚悟でゴール裏との関係を断つ勇気がないと、クラブの態度はどうしても及び腰になる。とはいえベローナは、人種差別反対の立場を崩すべきではなかった」

 イタリアサッカーで人種差別行為が表面に出始めたのは1990年代のことだが、その当時から「クラブが小規模な問題行為を処分できないものだから、大多数はあれでいいのかと思ってしまう」という指摘があったという。

 その後ベローナは、ウルトラスのリーダーに2030年までの出禁措置を言い渡した。通常DASPOと呼ばれる立ち入り禁止などの危険行為処分は公安当局が出すことになっているが、クラブが自主的に行うのは異例のこと。

 ここから、流れは変わるのだろうか。
 

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