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バロテッリ激怒の人種差別発言。
撲滅できないセリエAが抱える闇。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byUniphoto Press
posted2019/11/19 11:00
人種差別に激昂したバロテッリが、高くボールを蹴り上げた瞬間。彼の怒りのボルテージが伝わってくる。
敵味方関係なくバロテッリを励ます。
パレルモに移住してきたガーナ人の子だが、養子としてブレシア近郊に移ったバロテッリの国籍はイタリアである。だがそのルーツゆえに、グラウンドでは人種差別的な意味を含めたブーイングにさらされることが多かった。
そして、この日の相手はブレシアと強烈なライバル関係にあるベローナ。2016年以来4シーズンぶりに母国に戻ってきた彼は、普段にも増して苛烈なブーイングにさらされることになったのである。
ブレシアの選手も、またベローナの選手も懸命になだめ、慰め、励まして、バロテッリを思い止まらせた。約4分間の停止ののち、試合は再開。落ち着きを取り戻したバロテッリはプレーに復帰し、試合終了までピッチで戦った。
ベローナ関係者は差別コールを否定。
しかしこのエピソードは、ここで終わりではなかった。むしろその騒動が過熱したのは、試合後だったのである。ベローナのクラブ関係者が相次いで「人種差別コールなどはなかった」というコメントを発表したのだ。
「何も怖くもないし、はっきり言わせてもらうが、何も起こっていなかった」と試合後の記者会見で話したのはイバン・ユリッチ監督。「私自身もクロアチア人だから現役時代に『クソッタレのジプシーめ』と言われたことがある。でも今日に関しては、何も聞こえてこなかった」と言った。
そしてバロテッリについては「なんで彼があんな行動を取ったのかは彼に聞いていただきたい。私だって人種差別コールには嫌気がする。でもそういうふうに決めつけないで欲しい。嘘だ」とまで言った。
するとマウリツィオ・セッティ会長も「監督と同じ立場を取る。我々は何も聞いていなかった」と記者団に話したのである。
「ベローナのファンは皮肉屋だが、人種差別主義者ではない。それにそういうことが起こったら、何より我々が反対の行動をとる。我々にはDNAにスポーツマンシップが刻み込まれているし、有色人選手だっている」と弁明したのち、「バロテッリは多分試合のテンションから怒りに駆られてしまったのではないか」などと語った。