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バロテッリ激怒の人種差別発言。
撲滅できないセリエAが抱える闇。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byUniphoto Press
posted2019/11/19 11:00
人種差別に激昂したバロテッリが、高くボールを蹴り上げた瞬間。彼の怒りのボルテージが伝わってくる。
ブレシアの非難にベローナ市長が応酬。
確かに試合中、バロテッリに対して浴びせられたブーイングは指笛など主に“普通”のもので、有色人選手を揶揄する「モンキーチャント」は目立ってはいなかった。
だが少数であっても人種差別的なコールをしていた集団がいたことは、映像にも残っている。そして何よりバロテッリに対するブーイングそのものが苛烈で執拗だったことは疑いのないことだ。
ブレシアはクラブとして声明を出し、ベローナの関係者発言について「不適切なコメントだ。あれが深刻でないわけがない」と非難声明を出した。
騒動は、さらに拡大した。ベローナ市のフェデリコ・スボアリーナ市長は「私もスタジアムにいたが、人種差別コールなど聞こえなかった。1人2人がやる程度なら“コール”ではない」などと強調。そして「もう“判決”は出ている。少数のやったことを街全体のように伝えられるのは受け入れられない」とベローナを批判する側を非難した。
バロテッリ「害はお前らだ!」。
さらにベローナのウルトラスのリーダーとされる人物は地元ラジオの取材に対し、「バロテッリはパスポートを持っているが、100%のイタリア人ではありえない」「ネグロ(黒の侮蔑表現)と言ったら何か問題なのか? 捕まるのか?」などと驚くようなことを言い放った。
世間からはさすがに非難の声が上がった。ネットでは「いいかげんこういう輩をスタジアムから排除しろ」という声が多かった。ベローナ出身であるイタリアサッカー選手協会のダミアーノ・トンマージ会長も「人種差別をしているのが1人や2人でも多すぎなのだ」と批判した。
バロテッリに対しては「人種差別行為はまず審判に報告するという決まりをなぜ守らず、ボールを蹴り上げるなどの行為を働いたのか」という批判もあったが、人種差別に厳しい態度を示すナポリのカルロ・アンチェロッティ監督は「今季も似たような問題はすでに2度あった。彼の行為は正しい」と全面的に擁護した。
そして何より、深く傷ついたバロテッリ本人は心の叫びを吐き出した。自身のインスタグラムのタイムラインにメッセージ入りの画像を投稿し、失望を表明した。「目を覚ませ、害はお前らだ。こういう“人たち”は、サッカーだけじゃなく社会からも追放されるべき。今は我慢しろとか、ほっとけとか、もういいよ」