熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
ブラジル優勝U-17W杯で記憶すべき、
巨大な才能+不参加だった超逸材。
posted2019/11/20 08:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Getty Images
主審が試合終了の笛を吹くと、興奮した観衆の怒号にも似た歓声の中、ピッチ上のすべての選手が泣き出した。嬉し涙にくれる勝者、悔し涙を流す敗者……。“大人”の試合ではまず見られない光景だった。
17日夜、首都ブラジリアで行なわれたU-17ワールドカップ(W杯)決勝で、地元ブラジルが勇猛果敢なメキシコに土俵際まで追い詰められながらも劇的な逆転勝ち。16年ぶり4度目の優勝を遂げた。
ブラジルのフットボールは、自国開催の2014年W杯準決勝でドイツに1-7と惨敗した「ミネイロンの惨劇」によって、壊滅的な打撃を受けた。しかし、その後、この屈辱から立ち上がり、2016年のリオ五輪、今年の南米選手権(コパ・アメリカ)、そしてこの大会と自国開催の国際大会で優勝を重ね、自信を取り戻しつつある。
攻撃的かつ脆さもあるセレソン。
U-17ブラジル代表は、GKとCBを除く全員が激しく動き回り、ガブリエル・ベロン(パルメイラス)らスピードとテクニックを備えた選手が決定機を作り出す攻撃的なスタイルが持ち味だ。ただし、守備陣はマークのずれやポジショニングのミスから失点することがあり、これもまたブラジルらしい。
決勝前半は、個人能力で上回るブラジルが優勢。しかし、メキシコのGKエドゥアルド・ガルシア(グアダラハラ)のファインセーブもあって両チーム無得点だった。
後半、メキシコが少ないチャンスをモノにする。21分、左からのクロスをMFブライアン・ゴンサレス(パチューカ)がブラジルのCB2人に競り勝ち、頭で叩き込んで先制。
ブラジルは、ようやく39分、CFカイオ・ジョルジ(サントス)がPKを決めて追いつく。さらに、アディショナル・タイム4分のうち3分が過ぎたところで、右からのクロスの落ち際を途中出場のFWラザロ(フラメンゴ)が右足で鮮やかに合わせた。
ラザロは、準決勝フランス戦でもやはり試合終了直前に逆転ゴールを決めており、控え選手ながら優勝の立役者の1人となった。