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バロテッリ激怒の人種差別発言。
撲滅できないセリエAが抱える闇。
posted2019/11/19 11:00
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph by
Uniphoto Press
「街との関係? 難しかったね。ベローナは外国人を嫌う街さ。養子としてこの街に来た1980年代、ムラート(黒人と白人の混血である南米人)はオレくらいなもんだった。安心していられたのは、学校か北アフリカ出身の連中とつるんでいるときだけだったよ。
それにしても、これだけEU圏外の外国人に“汚れ仕事”をさせておいて、それで産業が回ってるのに、なんでこの街は人種を差別するのかがマジ意味分かんねえって。オレはムカついてた。それがラップをやる動機になったんだ」
2018年10月半ば、ハフィントンポストのイタリア版はあるイタリア人ラッパーのインタビューを掲載した。キネグロ、本名トンマーゾ・リゴーリ。ブラジルのサルバドール・デ・バイーアで生まれたが、4カ月のときにイタリアの古都ベローナに住むリゴーリ一家に養子として引き取られた。
むろん、「街に住むすべての人が外国人排斥主義者」などと言われると反発を覚える人もいるかもしれない。ただ、このラッパーが被差別者としてそう感じたということは、留意する必要があるだろう。
激昂したバロテッリは試合中に……。
そのほかならぬベローナで、ミランのコートジボワール人MFフランク・ケシエがベローナのウルトラスの一部から人種差別的ブーイングを受けたのは2019年9月15日のこと。そこからわずか2週間ほどで、あの騒動は起こった。
ベローナvs.ブレシアで、ブレシアのイタリア人FWマリオ・バロテッリが激昂し、試合中のグラウンドから立ち去ろうとしたのだ。彼は「スタンドから人種差別コールを聞いた」と主張した。
後半の開始から10分が経過したときだ。体を寄せるDFを抑え、前線でボールをキープするバロテッリに強烈なブーイングが浴びせられた。すると彼は激昂し、スタンドに向かってボールを高く蹴り上げた。そして、そのままグラウンドから立ち去ろうとした。