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迷走エメリ、冷遇エジル、主将軽視。
問題続出アーセナルの迷宮は続く。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byUniphoto Press
posted2019/11/12 11:40
エメリ監督率いるアーセナルはレスターにも敗れ、現在6位。そろそろ好転の兆しを見せないと……という段階に来ている。
10番タイプを置かないエメリ戦術。
第11節のウォルバーハンプトン戦やリーグカップのリバプール戦を見ても分かるように、エジルは後方と前線をリンクする術に長けている。ライン間にスルスルと進入。ボールをコントロールしながら視野を確保し、FWが欲しいところに欲しいタイミングで絶妙のパスを供給していた。
エメリは2列目もしくは中盤インサイドに、10番タイプを置こうとはしない。よりインテンシティの高い選手を好む。アーセナルに当てはめるとエジルではなく、セバジョス、トレイラ、マテオ・ゲンドゥージが優先だ。しかし攻撃は不発で、守りも曖昧だ。それでもなぜエジルを冷遇してきたのか、エメリには正当な理由があるのだろうか。
前主将ジャカがSNS上で“大暴れ”。
さらなる問題はリーダーシップである。
選手間の投票によってキャプテンに選ばれたグラニト・ジャカは、サポーターには支持されていない。
第10節のクリスタルパレス戦、2-2で迎えた61分、彼はブカヨ・サカとの交代に不満だった。ゆっくりと歩きながらピッチを去ると、痛烈なブーイングが浴びせられる。するとジャカは“Fワード”で応酬。その後、新キャプテンにオーバメヤンが選ばれ、事態はなんとなく収束した。
しかし、憤懣やるかたないジャカは移籍市場が再開する来年1月、アーセナルを離れる公算が大きい。SNSを通じて家族を中傷されたため、「こんなところでやっていられるか」と、堪忍袋の緒が切れたようだ。
今回の件に限らず、なぜアーセナルはキャプテンを重視しないのだろうか。リバプールにはジョーダン・ヘンダーソン、ジェイムズ・ミルナー、ビルヒル・ファンダイクと、生まれながらのリーダーが3人もいる。
マンチェスター・シティのダビド・シルバは、ジョゼップ・グアルディオラ監督もリスペクトするキャプテンだ。エバートンのシーマス・コールマンは誰もが認める人格者で、リーグは違えどアトレティコ・マドリーに所属していた当時のディエゴ・ゴディン(現インテル・ミラノ)は、対戦相手も一目置く親分だった。