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ACL逆転優勝へ2つのビッグセーブ。
浦和を救った福島春樹の「手首」。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byGetty Images
posted2019/11/11 12:15
敵地での第1戦は劣勢を強いられた。それでも0-1で凌いだ事実は、埼玉スタジアムに戻る浦和イレブンに勇気を与えるはずである。
70%超えのボール保持を許した中で。
いずれも、実は相手選手に詰められるような状況になっている。しかし、福島の弾いたコースはよりシュートのチャンスが狭くなる斜め後方のもの。最初のシーンでは相手のシュートが枠を捉えられず、次のシーンでは詰めてきたバフェティンビ・ゴミスはシュートを諦め、味方選手へのパスを選択している。
もし、福島が鹿島戦のように次のシュートが簡単に打てるポジションにボールを弾いていたら、どうなっていたのか。それは、アウェーの初戦を0-1という最小限の点差による敗戦では収まらなかっただろう。
ただでさえ、試合開始から相手に押し込まれて70パーセントを超えるボール保持を許していた浦和だ。前半のうちにホームの勢いを助長させるような先制点を与えていれば、より厳しい場面が増えたことは想像に難くない。そうした意味でも、彼が見せた2つのセービングには大きな価値がある。
西川の第2GKとして積み重ねた準備。
確かに、後半15分に喫した失点では課題が見えたかもしれない。サイドからのクロスに対して、飛び出す構えを見せながらボールにコンタクトできず、逆サイドから入ってきた選手にシュートを決められた。
飛び出さずステイする判断がハッキリできていれば、急に福島が視界に入った岩波拓也もより良い対応をできたかもしれない。また無人のゴールに押し込む形になったカリージョは、シュート時に福島の姿が目に入ることで、成功率を多少なりとも落としたはずだ。
かなりの確率でゴールを奪われてしまうシーンだったのだろうが、その確率をどれだけ低くできるかという点では、彼にできることはあっただろう。
しかしながら、彼が西川の第2GKとして「いつ試合に出ることになるか分からない」という緊張感とともに積み重ねてきた準備と、与えられた舞台で出た課題を次の場面で繰り返さずに改善していく部分はハッキリと見せた。
福島が今後も長く続けていくプロサッカー選手、GKとしてのキャリアの中では、こうした経験とそれを克服する努力が必ず糧になるし、それが実を結ぶ日が来る。