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ACL逆転優勝へ2つのビッグセーブ。
浦和を救った福島春樹の「手首」。
posted2019/11/11 12:15
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph by
Getty Images
「僕たちは、何センチとか何ミリのところで勝負をしていると思っているんです」
浦和レッズのGK福島春樹が、自身のJ1デビュー戦となった鹿島アントラーズ戦で0-1と敗れた試合後に話した一言だ。
なぜこのようなリーグ終盤に差し掛かった時期にデビューのタイミングが訪れたかと言えば、並行して戦っているAFCチャンピオンズリーグ(ACL)での状況があった。
中国へと遠征したACL準決勝、広州恒大との第2戦。浦和は後半立ち上がりの5分に先制ゴールを奪った。初戦の2-0と合わせれば3点リードであり、アウェーゴールも加味すれば4失点しなければ良いという状況だ。チームは当然、スコアを極力動かさないことを優先にする。
そうした中で迎えた同14分、主審からイエローカードが提示された。その対象はGK西川周作。試合状況を考えると、必要以上に厳しく判定されたとも感じるような遅延行為によるものだった。これが決勝トーナメントで累積2枚目となった西川は、決勝の初戦が出場停止になった。
鹿島戦では好セーブを押し込まれた。
大槻毅監督が「その瞬間から考えている」と話したGKの起用。今季公式戦は天皇杯の初戦となった流通経済大学戦の出場のみだった福島に、リーグ戦での出場機会を与える決断をした背景だった。
そして鹿島戦の後半27分だった。両サイドに揺さぶった鹿島の攻撃から、最終的にペナルティーエリアに入ったくらいの位置で土居聖真が低弾道のミドルを放った。福島はゴール前の混戦を抜けてきたボールにしっかりと反応して弾いたが、こぼれ球をセルジーニョに蹴り込まれた。
パッと見れば、ファインセーブの福島に全く責任はないようなプレーに思えた。
むしろ、久々の出場という中で素晴らしい反応を見せたセービングにすら見える。しかし、この失点を振り返る福島が切り出したのが、冒頭の言葉だった。