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ドルトムントvs.シャルケは特別だ。
94年間で増し続ける熱と激闘の系譜。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byUniphoto Press
posted2019/11/09 09:00
ブンデスきっての人気クラブ、シャルケとドルトムント。両チームがしのぎを削ることで、地元ファンの熱も上がってくる。
この地域の人に国籍を問うと……。
この地域の人は国籍を聞かれると「ドルトムント」、「シャルケ」と答えるほどのアイデンティティを持っている。
だからこそ、ファンにとってダービーはどんな試合よりも特別だ。あるファンは「ダービー戦の勝利は僕らにとってマイスターシャーレ(リーグ優勝皿)と同じくらいの意味があるものなんだ。そのくらい大事で、そのくらい価値があるんだ」と、その重みと意味合いを語ってくれた。
シーズン中の成績は関係ない。むしろ、うまくいっていないシーズンでは、この試合にかける思いが普段以上に強くなる。相手の現状に同情したり、ましてやサポートしたりするつもりなんてあろうはずがない。
だからこそ、何度も名勝負が生まれている。
2009-2010シーズン、優勝のチャンスがあったシャルケの夢を打ち砕いたのがダービーでのドルトムント勝利だった。逆に首位を争うチームとしてダービーに挑んだドルトムントが手痛い返り討ちにあってしまったのが昨シーズンだった。
置かれた順位は関係ない。大事なのはこの試合。そこで何を起こすかだ。
もちろん、ダービーでは何かが起こることをファンも選手も監督もよく知っている。最大限の集中力と闘争心で臨むことが最低条件だ。
バチバチとした接触の連続。
試合が始まると、ピッチ上のあちこちでバチバチとしたぶつかり合いが起こる。10分、中盤でシャルケのアリがドルトムントのゲッツェと激しく接触していく。
しかし主審はファウルを取らず、アリは一度倒れながらもボールを奪い返すと、すぐに攻撃にうつっていく。20分にドルトムントのハキミがシャルケのスタンブリのタックルで倒されると、ベンチ前でシャルケのワグナー監督とドルトムントのファブレ監督がつかみかからんばかりの勢いで言い争う。
シャルケは秩序だった守備でドルトムントを追い込み、攻撃へと転じていく。システム的にはドルトムントSBの位置がフリーになりやすい。だが狙いは逆にそこだ。フリーになりやすいところをあけて置き、そこへのパスを誘い込むわけだ。
37分には右サイドで下がってボールをもらおうとしたサンチョを孤立させ、3選手で囲い込んでボールを奪取。アンカーの位置で起用されているマスカレルのボール奪取能力が素晴らしい。