欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ドルトムントvs.シャルケは特別だ。
94年間で増し続ける熱と激闘の系譜。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byUniphoto Press
posted2019/11/09 09:00
ブンデスきっての人気クラブ、シャルケとドルトムント。両チームがしのぎを削ることで、地元ファンの熱も上がってくる。
意志のほとばしりを感じるプレス。
基本1アンカーのシステムだとセンターからあまり動かないように守らせたがるが、シャルケは逆だ。マスカレルにボールを取りに行かせるような守り方をしている。
後半も勢いはシャルケ。意志のほとばしりを感じさせる積極的なプレスで、ドルトムントはボールを前に運べない。
ワグナー監督がコーチングゾーンからダイナミックなジェスチャーで選手を鼓舞する。その様子を見てファンがさらに声を上げて応援していく。ルーズボールに対しても常に複数人数が積極的にアプローチし、セカンドボールをどんどん拾っていく。だが押し気味に試合を進めながら、シャルケは得点をあげることができない。
一方、ドルトムントのファブレ監督も盛んに相手に対してプレスをかけろというジェスチャーを見せる。でも数歩相手に寄せるだけ、次の瞬間にはあっさりと相手に展開を許している。頭を抱えてベンチとコーチングゾーンを何度も往復する。
ようやく75分すぎからドルトムントが少し攻勢になり、サンチョ、アザールがドリブルを起点にシャルケ守備陣を揺さぶる場面が増えてきた。
90+1分、ブラントがドリブルからスルーパスを通す。唯一完全に守備ラインを越えるパスが出た。しかし、ボールはロイスの足にわずかに届かず。結局、ブンデスリーガ通算95試合目のダービーはスコアレスドローで終わった。
シャルケ陣営の方が表情が明るい。
勝ち点1を分け合った両者は、順位的には揃って上位につけている。だが大型補強を敢行し、優勝候補として臨んでいるドルトムントと、昨季ぎりぎりで残留を回避して仕切り直しのシーズンとなっているシャルケとでは取り巻く状況が違う。
やはり、シャルケ陣営の方が表情が明るい。試合後のミックスゾーンでキャプテンのGKニュベルは「前半にビッグチャンスが2つあったし、無失点で終えることができた。僕らの方が良かったし、勝つこともできたと思う。後半はチャンスを全く与えなかった。とてもポジティブに捉えている。勝てなかったのは残念だけど、がっかりはしてないよ」とメリハリのあるトーンで記者陣の質問に答えていた。
時おり、笑い声が起こるほどに雰囲気がよかった。